小林よしのり氏の認識は「木を見て森を見ず」
掲載誌 Sapio = サピオ 9(8) 1997.05.14 p.73~75
吉見 義明
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000002-I4209096-00
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3375035

『新ゴーマニズム宣言(4)』小林よしのり
http://www.ianfu.net/will/publish/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%AE%E3%82%8A.html
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3375036

慰安婦 単行本 - 2020/1/30
小林 よしのり (著)
https://www.ama▼zon.co.jp/dp/434403564X
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784344035645
P114
吉見義明氏の「従軍慰安婦認識」は「木を見て海だと言い張る」の類だ!

「はじめに」への反論

「従軍慰安婦」という言葉は当時なかったが、戦時中「慰安婦」という人たちがいて、軍はこれに関与していた。
ここまでは議論すべき点はない。
 問題は、それが「強姦」だったのか「売春」だったのか。これだけだ。
   …(略)…
 これを吉見氏が言うように「本人の意思に反した場合はすべて『広義の強制』だ」とするとどうなるか。
現在ソープランドで働いている人でも、本人がたった一言、「本当はこんな仕事したくはなかった」
と言いさえすれば「広義の強制」が成り立ち、強姦の被害者だということになるのだ。しかも吉見氏は
「公娼制も性奴隷」と書いているからソープ嬢も性奴隷だということになろうし、法律で禁じられている
売春を国家が黙認しているのは明白だから、国家補償に持ち込むことも可能である。「広義の強制」などと
言い出したら議論にならないのだ。

「強制連行について」への反論

 現在、韓国ではまさに「狭義の強制連行があった」というのが公式見解で、一般常識である。
 これは吉見氏が発表した資料が発端で起きた誤解である。「狭義の強制連行は確認できない」と認めた以上、
吉見氏は日韓友好の見地からも、一刻も早く韓国に対して公式見解の訂正を求める責任がある。なのに、なぜ
それをしようとしないのだろう。
 なお、「狭義の強制連行は占領地であったことは確認できる」というのは単に一部軍人の軍規違反による
暴走行為であり、発覚したものは処罰されているし、…(略)…。「業者は軍が選定した」というが、例えば
吉見氏が挙げた「支那渡航婦女に関する件伺」という資料にも、…(略)…実際に資料を読めばすべて
「慰安婦のためを思っての関与」なのが一目瞭然である。
 吉見氏は軍の関与の具体例を一々指摘するが、もっと大枠の「軍は、何のために関与したか」ということは
一切考えておらず、全体の構造を無視している。「木を見て森を見ない議論と言われても仕方がない」のは、
吉見氏の方ではないだろうか。
   …(略)…
 ところで、募集時の違反行為を防ぐようにという指示が内地に出されたが朝鮮・台湾では出されなかった、差別だ、
と吉見氏は言っているが、当時は慣例として植民地でも内地に準じた扱いになっていたことが多い。…(略)…
 渡航許可証発給や慰安婦登録の資料、軍医の証言などを見ても、日本人と朝鮮・台湾人の間に差別的な扱いは
確認できず、まして違法な募集があってもわざとそれが野放しになっていたなどと判断できる材料は何ひとつない。
もっと事実を深く見つめるべきだろう。

「慰安所での強制」への反論

 次に吉見氏が「もっと重要」という慰安所での強制。「自由がなかった」ということをどこまでも拡大解釈していく
わけだが、一体どこに吉見氏が言うような「強制」のない職業についている人がいるというのだろう。勤め人には
イヤな仕事だからといって「拒否する自由」などないし、勤務中は「外出の自由」なんてない。これが奴隷状態
だというなら、世の中全員一人残らず奴隷だ。
 前借金で縛られていたから「廃業の自由」もなかった、なんて主張はもうムチャクチャだ。…(略)…若い女なら
フーゾク関係の仕事の選択を余儀なくされるというのもよくある話だ。吉見氏は50年以上前のことを発掘するより
今現在苦しんでいる数多くの「債務奴隷」を解放すべく運動を起こした方がいいのではないか。
   …(略)…