本拠地、自室で迎えた宿題戦
先発7月中はやらんでええやろ精神が大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった
1階に響くマッマのため息、どこからか聞こえる「始業式までに提出は無理だな」の声
無言で帰り始める友人達の中、1学期の首位打者キッズは独り机の上で泣いていた
夏休み初日で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるおばあちゃんの家・・・
それを夏休み最終日で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」キッズは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、キッズははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい麦茶の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、早く宿題をしなくちゃな」キッズは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、キッズはふと気付いた

「あれ・・・?宿題が終わってる・・・?」
机から飛び起きたキッズが目にしたのは、最終ページまで埋めつくさんばかりの解答だった
千切れそうなほどに扇風機が振られ、地鳴りのようにラジオ体操第2が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするキッズの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「おい、新学期だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったキッズは目を疑った
「お・・・幼なじみ?」  「なんだキッズ、居眠りでもしてたのか?」
「・・・おばあちゃん?」 「なんだキッズ、かってに初日から休みやがって」
「先生・・・」  キッズは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:絵日記 2番:図画工作  3番:朝顔観察 4番:自由研究 5番:読書感想文
6番:内川  7番:漢字ドリル 8番:歯磨きカード 9番:夏休みの計画表
暫時、唖然としていたキッズだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「終わった・・・終わったんだ!」
マッマからランドセルを受け取り、学校へ全力疾走するキッズ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、布団の上で冷たくなっているキッズが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った