インフラの不足から生じる混雑現象、とくに日本の場合には、通勤電車の混雑や道路混雑が1960〜70年代に激しくなった。
こうした都市問題に対して、政府は【経済学で考えられる処方箋とはまったく異なる手法を採用した。】
政府は地方のインフラ整備を進め、地方からの人口の流出を抑制することを計画した。同時に【容積率を規制】することによって、都市への人口流入を抑制しようとした。
容積率が低く抑えられれば、土地の高度利用が進まず、低層の建物しか建設できない。
そうすることによって、計画的にオフィスや住宅の供給量を制限して、人口の流入や企業の立地を抑制しようとしたのである。
しかし、こうした規制や計画は、都市の生産性をかえって低下させてしまう。

東京では都心・副都心の商業地は600%〜1000%、その他商業地は400%〜700%、住宅地は200%〜400%を指定することを原則とし、
低層独立住宅地については第1種高度地区(高さ10m)を指定して実質的に100〜120%の容積規制とした。
当初は商業地での容積率上限を600%とする案も検討されたということであるが、従来の31m絶対高さ制限の下では現に1000%の建物が建っていること、
住宅地についても絶対高さ20mならば地上6階・地下1階が建つので建蔽率60%として容積率400%は【既得権】という声も強かったといわれ、
指定容積率の数値そのものは、かなり【緩やか】なものとなった。
こうして、東京の当初容積率指定は、旧来の形態規制によって結果的に許容されていた土地利用密度を大幅に削減することなく、都心や駅前など利便性の高いところは密度が高く、
周囲に広がるにしたがってしだいに密度が低くなる、という一般的に観念されている都市の密度パターンに応じた【段階的】な制限となった。

都市に多くの人口や産業が集積することによって、さまざまな利益が企業だけでなく、消費者にも発生する。
こうした利益は経済成長に直結するものである。
効率の悪い自治体が退出することは望ましいことと言えるのである。