義父が急になんでもないのに転ぶようになり大病院での診断の結果、
ALSを発病したことが分かった。身体の機能が末端からどんどん
働かなくなっていく恐ろしい難病で治療法はない。
症状がどんどん進行して病院で胃ろうと人工呼吸器の手術をうけると
治療は終わったから退院してくれと通告された。
選択肢は自宅で家族が看護するか、終末患者を収容するホスピスに
入所させるか。同居していた娘の判断で、遠方の辺鄙なホスピスに
入れさせられた義父のその後は、手足も拘束され幾つもの管につながれ、
まばたきで意思をつたえるしかない廃用身の生き地獄だった。
見舞いに行くとポロッと涙を流して、死なせてくれ頼むよ…
と訴えてきた。死ぬ自由、死ぬ権利すら失ってしばらくして獄門死
のような最後だった。健常者の自殺は止められないが、生き地獄の
治療不能のALS患者には死ぬ権利すら認められないのは絶対に間違っている。
あの義父の悲痛な晩年を思うと、古希をすぎて自力自活でき、好きなものを
飲食できる今の老境に本当に感謝している。