→平均賃上げ率のエコノミスト予想は4.1%、昨年の初回集計は3.8%
→4日時点の賃上げ要求は5.85%、30年ぶりに5%を上回る-連合

今年の春季労使交渉(春闘)は大企業中心に満額回答が相次いでおり、約30年ぶりの高水準だった昨年を上回る賃上げに期待がかかる。来週にも日本銀行が17年ぶりの利上げを決めるとの観測がある中、日銀が春闘の動向を判断材料として重視しているだけに、注目度はいつにも増して高い。

  連合は15日午後4時15分に記者会見を開き、春闘の第1回回答集計分の平均賃上げ率を発表する。ブルームバーグが月初に集計したエコノミスト39人の予想中央値は4.1%と前年の初回集計(3.8%)を上回っており、予想通りなら最終集計との比較で1992年(4.97%)以来の高水準となる。連合は賃上げ目標を昨年の「5%程度」から「5%以上」に引き上げて今春闘に臨んでいる。

  日銀の植田和男総裁は、大企業中心に賃上げに前向きな姿勢が示されていることに着目している。13日には、大規模緩和策の修正を判断する上で賃金と物価の好循環を確認する必要があり、春闘の動向が「大きなポイントになる」との考えを改めて示した。今回の集計で高水準の結果が得られれば、18-19日の金融政策決定会合でのマイナス金利解除の観測が一層強まる可能性がある。

□日銀の3月マイナス金利解除予想が急増、4月とほぼ二分-サーベイ - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-11/SA61MFT0G1KW00

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、大手企業の積極的な賃上げスタンスを踏まえると、第1回集計結果は昨年の第1回をはっきり上回ることが見込まれると指摘。「3月日銀会合でのマイナス金利解除がより一層現実味を増している」との見方を示した。

賃上げ率、2年連続で30年ぶり高水準か
(年ごとの賃金推移グラフは引用できないので元ソースからご覧下さい)
出所:連合(賃上げ率、ベアともに最終集計ベース)

  人手不足や物価高が続く中、4日時点の平均賃金方式の賃上げ要求(3102組合)は5.85%と30年ぶりに5%を上回った。13日の集中回答日にはトヨタ自動車や日産自動車など労働組合側の要求に満額回答する企業が相次ぎ、自動車総連の平均賃上げ率は5%を超えた。日本製鉄(14.2%)や三菱重工業(8.3%)など、さらに高い水準で妥結した企業もある。

  鈴木俊一財務相は15日午前の閣議後会見で、今春闘について、「昨年を大きく上回る賃上げが示されていることを踏まえれば、大手企業を中心に力強い賃上げの流れができている」と指摘。「こうした流れが中小企業にも波及し、昨年以上の賃上げが進むことを期待している」と語った。持続的な賃上げを支援するため、政府としてあらゆる政策を総動員するとしている。

●中小への波及が鍵
  連合を構成する47の産業別労組のうち、自動車や電機のメーカーなど五つの産別労組が加盟する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)の13日の集計によると、平均賃上げ額は1万4877円、率にして5%相当と、確認可能な14年以降で最も高い水準となっている。中小企業を含む約2000の労組が加盟するものづくり産業労働組合(JAM)は、12日までに妥結した60組合の平均賃上げ率が5.32%と発表した。

  賃上げの流れを全雇用者の約7割を占める中小企業に波及させることが、賃金全体の底上げの鍵となる。JAMの安河内賢弘会長は会見で、妥結状況は「非常に高い水準。これから続く中小の春闘に大きな勇気を与える回答」と述べた。

  集中回答日の夕方には、政府と経済界、労働団体の3者による政労使会議が開かれ、大手の賃上げの動きを中小に広げる取り組みについて意見交換が行われた。岸田文雄首相は、相次ぐ高水準の回答について「30年続いたコストカット型経済から、いよいよ次のステージに移行していくために良い動きを確認できた」と指摘。こうした傾向が中小企業でも継続できるよう、あらゆる手を尽くすと語った。

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トヨタ・日産など春闘で高水準回答相次ぐ、日銀政策変更後押し - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-12/SA6ABST0AFB400
連合、春闘賃上げ要求は30年ぶりに5%上回る-日銀正常化後押し - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-06/S9N7Z2T1UM0W00

2024年3月15日 8:15 JST
更新日時 2024年3月15日 12:04 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-14/SABEZFT0AFB400