[東京 31日 ロイター] - 31日に公表された日銀の2013年下半期の金融政策決定会合の議事録からは、同年4月に黒田東彦総裁の下で打ち出した量的・質的金融緩和が歴史的な株高・円安につながるなど、政策効果にボードメンバーが安堵する一方で、「2年で2%物価目標を実現」と打ち出した異例のコミットメントを巡り、メンバー間で認識の差が出てくる姿が垣間見られた。(以下、肩書は当時)

<荒れた長期金利も低位安定へ>
アベノミクスの推進役と期待され、総裁に就任した黒田東彦氏の下、13年4月会合で「2年で2%物価目標を実現する」とうたい、日銀は量的・質的金融緩和に踏み出した。13年の1年間で日経平均は56%、ドル/円は2割上昇した。同年下半期は、期待した政策効果が着実に出てきているとして金融政策の現状維持が続き、歴史的な円高で断続的な追加緩和に追い込まれた白川方明総裁時代とは様相が一変した。
量的・質的金融緩和を打ち出した当初、長期金利には上昇圧力がかかり、5月下旬には一時1%を超えたが、日銀が大量の国債買い入れを続ける中で緩やかな低下傾向に転じ、9月以降は0.6―0.7%のレンジで安定的に推移した。

森本宜久審議委員は7月の会合で「前回会合以降、国際金融資本市場の変動が大きくなるもとでもわが国の長期金利が安定している背景には、(国債)買い入れの進行とともにオペ運営の柔軟化の効果がある」と指摘。政策効果を最大限発揮していくためには、引き続き市場のボラティリティを抑えていくことが肝要だと説いた。
岩田規久男副総裁は「予想インフレ率が2%に向けて上がっていく一方で、名目金利はそれほどは上がらないというルートを通じて、実質金利が低下する効果が続く」と述べた。

<重要なのは「2年で2%」か「2%を安定的に持続」か>
喫緊に対処しなければならない課題に乏しくなる中、決定会合で議論が盛んになったのは金融政策についての市場や国民とのコミュニケーションのあり方だ。
白井さゆり審議委員は8月の決定会合で、声明文に盛り込まれた「(物価)2%を2年程度を念頭に早期に実現」という日付ベースの表現と、「2%を安定的に持続するのに必要な時点まで金融緩和を継続」という経済状態に条件づけられた表現とは「どちらが優先されるのか分かりにくい」と指摘した。
白井委員は、執行部による対外説明資料では2年で2%実現の方が「コミットメント」という強い表現とともに前面に出ているが、そのコミットメントが「満たされないと判断されれば、2年程度で実現するように市場参加者が追加的な金融緩和を期待、要請するのはある意味自然」と述べた。
国民から両者の表現のどちらが重視されるかで、追加緩和のタイミングや内容への期待が異なり得るとして、対外的なコミュニケーション戦略としては「2%を安定的に実現するまで継続していく」との表現の方をより明確に情報発信する工夫が必要だと語った。
これに対して、黒田総裁は「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に」の文言はデフレ脱却に向けた日銀の強い決意を示す意味があると説明。「インフレ期待に働きかけるという政策目的からも、この部分を弱めるような情報発信を今行うのは適当ではない」と述べた。

>>2 へ続く

□金融政策決定会合議事録 2013年 : 日本銀行 Bank of Japan
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2013/index.htm
2024年1月31日午前 9:02
ロイター
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/OXBS2GYNJ5NYZPPWYAUUJK54VA-2024-01-31/