日経ビジネス

2023年11月2日 2:00

日経ビジネス電子版

ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)の被害を受けても日本企業の大半は身代金の支払いを拒否する。その決然とした姿勢は、
世界でも有数であることが調査から分かった。日本企業の強気のスタンスはテロ組織に対して強硬な態度で対応する米政府にも通じるものがある。
ただ徹底的に訓練された特殊部隊などを駆使して「人質」を奪還する米政府のテロ対策と比べると、その救出能力には雲泥の差がある。




米海軍特殊部隊SEALS(シールズ)の隊員らが夜闇に紛れてナイジェリア北部にパラシュートで降下した。着地点から徒歩で5キロメートルほど進軍すると、
武装勢力の野営地が現れた。武装勢力が誘拐した米国人男性を奪還すべく、シールズの隊員らは突入した。

米国人男性が誘拐されたのは2020年10月26日である。武装勢力が男性をテロ組織に引き渡す恐れがあったため、
米政府は早期に救い出す必要があると判断し、誘拐から5日後の10月31日未明に人質救出作戦の実行に踏み切った。銃撃戦の末に救い出すことに成功、
米国防総省の広報官は「これからも米政府は、世界中のどこであろうと、国民と国益を守る」との声明を発表した。

仮に米国人男性がテロ組織に引き渡されていても、一定程度の成功率が見込まれれば、米政府は救出作戦を実行しただろう。
実際00年以降、シールズや米陸軍特殊部隊デルタフォースは、アフリカや中東でテロ組織などを相手に多くの人質救出作戦を決行してきた。





対テロ強硬姿勢を支える人質奪還能力

世界中のほとんどの地域に展開可能なシールズやデルタフォースの存在が、「テロには屈しない」との米政府の強硬姿勢を支えている。
テロ組織から身代金を要求されても、米政府は決して支払わない。米国と同様に、身代金を支払わないことで知られる英国政府の断固とした態度を支えているのも、
世界最強の特殊部隊とうたわれる英陸軍特殊空挺(くうてい)部隊(SAS)の存在だ。

人質を救うために、テロ組織に多額の身代金を支払ってきたとされるフランスやドイツ、スペイン、イタリアなどと比べて、米英の強硬姿勢は際立つ。

世界的に見て日本も身代金の要求を拒否する姿勢は際立っている。ただこれはテロ組織からの要求ではなく、日本企業のランサムウエアへの対応の話だ。




身代金支払率は米76%、日本18%
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC313OC0R31C23A0000000/