損害保険ジャパンは8日、白川儀一社長(53)が辞任すると正式に発表した。中古車販売大手ビッグモーター(東京・港)による保険金の不正請求問題で、不正の可能性を認識しながら取引を再開するなど不適切な対応を取ったことへの責任をとる。ビッグモーターによる不正は大手損保トップの辞任に発展した。

辞任時期については、指名委員会から「顧客や代理店の関係者へ迷惑をかけないよう、後任者へのしっかりとした引継ぎが完了した時期にすべき」と指示を受け、今後、決めるとしている。

SOMPOホールディングス(HD)と損保ジャパンが8日開いた記者会見は3時間を超えた。会見の冒頭でSOMPOの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO)は「ご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわび申し上げます」と話した。

損保ジャパンは2022年7月上旬にビッグモーターとの取引を再開するか協議した。8日の会見で白川氏は「再発防止策の実行を条件に(ビッグモーターとの)取引の再開を判断した」と自ら再開を主導したことを認めたうえで「軽率な判断で深く反省している」と陳謝した。

白川氏は当時の決定を「大きな経営判断ミス」と振り返り、「信頼回復への一歩を明確にするためにも一日も早い辞任が必要だ」と述べた。持ち株会社の桜田CEOには8月29日に電話で辞任の意向を伝えたという。桜田氏は自身の経営責任について「独立した社外調査委員会の報告で全貌が明らかになったら厳正に対処する」と述べた。

会見で白川氏はビッグモーターと1988年に取引を始めたと明らかにした。04年からビッグモーターに出向者を送り、15年からは故意に自動車を傷つけていた板金塗装部門へ社員を派遣していたという。白川氏はビッグモーターを「対等なパートナーだが大きな保険料をもらっており、現場では気を使うところがあったのではないかと推察する」と話した。

白川氏は22年4月、損保ジャパン社長に就任した。就任時は51歳。大手の金融機関では最年少のトップとして話題になった。SOMPOは石川耕治執行役常務が8日付で損保ジャパンの代表取締役副社長に就任したと発表した。白川氏が退任するまで、ともに再発防止を策定や実行を担う。

金融庁も損保ジャパンの対応を注視している。ビッグモーターと損害保険ジャパンに対して立ち入り検査の実施を通知した。鈴木俊一金融相は5日の閣議後会見で「(両社の)経営管理体制や内部管理体制に踏み込んで調査する必要がある」と述べていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB083HB0Y3A900C2000000/