山本 彰美2023.2.27

大阪中之島デンタルクリニック院長・山本彰美氏が解説します。





治療を少しずつでしか進められない、「保険診療の壁」

歯科医院に行くと、患者は一度に複数の歯を治療してほしいと思っていても、今日はここまでにしましょうと区切られてしまうことがよくあります。1本の歯を治療するにも、前回は削るだけ、今回は消毒だけ、などと少しずつしか進まないこともしばしばあります。
歯の状態によっては1回数分で終わってしまうような歯根の消毒を、何回も通院して繰り返さなければならないこともあります。そうなると「せっかく来たのに、えっ? もう終わり?」と、拍子抜けしてしまうものです。

なにかと忙しい現代人にとって、歯科治療は時間も手間もかかって面倒なイメージをもたれがちです。歯科恐怖症*でなくても、そんなふうに思っている人は多いと思います(歯科治療を極度に恐れ、さまざまな拒絶反応があらわれてしまう状態。国内では500万人前後が歯科恐怖症で歯科受診を避けていると推測されている)。

歯科医師側にも、そんな患者心理は十分伝わっています。そして症例によっては内心、今日のうちにもう少し治療を進めておきたいとか、これだったら一度にすませられるのでは、と思うこともあるのです。

しかし歯科医師が自己判断でできることには限りがあります。なぜなら「保険診療の壁」が立ちはだかるからです。保険診療で歯科治療を行う場合、遵守しなければならない国で定められた決まり事がいくつもあります。





日本の「国民皆保険制度」の恩恵は大きいが…
https://gentosha-go.com/articles/-/49242