理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度を競う世界ランキングで2位だった。初登場の米国の「フロンティア」が米国勢として2年半ぶりに首位となった。世界では量子コンピューターに主役が移りつつあるが、国産スパコンも安全保障上無視できない。国は後継機開発も検討し、今後は技術変化を見極め柔軟な開発資源の配分が必要になる。

専門家の国際会議が30日、ランキングを公表した。フロンティアは1秒間に110京回(京は1兆の1万倍)の計算性能を示して1位となった。同100京回の計算ができる「エクサ級」と呼ばれる領域に足を踏み入れ、2020年6月から4期連続で首位を守ってきた2位の富岳(同44.2京回)に2倍以上の差をつけた。ランキングは半年ごとに公表する。

スパコンランキングはこれまでスポーツのように国のIT(情報技術)競争力を示す象徴になってきた。ただ、ランキングの意味合いは変容してきている。世界ではスパコンをしのぐ性能が期待される量子コンピューターに開発の軸足が移行しつつあるためだ。

米グーグルなどIT大手は多額の資金を投じて研究を急ぐ。30年前後には高度な計算力を実現する可能性もある。日本も22年度中に「国産初号機」を整備する方針だ。

将来的には化学や金融、人工知能(AI)活用などの領域で高度な計算の主役が量子コンピューターに置き換わっていくとみられる。とはいえ量子コンピューターの技術はまだ未熟で、適用範囲を探っている段階だ。スパコンも膨大なデータを扱うAIの開発や、気候や産業用途のシミュレーションなどでは当面、重要性が続くとみられる。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC283LV0Y2A520C2000000/