日本は、韓国はおろか、中国やポーランドより物価が安い国になってしまった。アベノミクスの前には、こうしたことはなかった。アベノミクスで円安を進めたためにこうなった。

いまや日本人は、外国で買い物旅行を楽しむことができない。それだけでなく、高いiPhoneや高い原油を買わなければならない。

日本で390円のビッグマックが、中国では442円

英誌『エコノミスト』が作成する「ビッグマック指数」で、日本の地位低下が著しい。

昨年11月7日の本欄「これでよいのか安い日本。ビッグマック指数で中国やポーランドの下位」で、「他国のビッグマック指数が6月時点と変らなければ、日本は中国やポーランドに抜かれる」と述べた。

 この予想が的中してしまった。

 今年2月の数字では、実際に、中国に抜かれてしまった。ポーランドにも抜かれた。いまや日本より下位にあるのは、ペルー、パキスタン、レバノン、ベトナムなどといった国だ。

 「ビッグマック指数」とは、「『ビッグマック価格がアメリカと等しくなる為替レート』に比べて、現実の為替レートがどれだけ安くなっているか?」を示すものだ。しかし、これは、分かりにくい。この指数よりも、「ある国のビッグマックが自国通貨建てではいくらか」を見るほうが、直感的に分かりやすい。

 日本について、2020年2月時点での値を実際に計算して見ると、つぎのようになる。日本は390.2円だが、1位のスイスは804円と、猛烈に高い。3位のアメリカは669.3円で、かなり高い。韓国の439.7円も、日本よりずいぶん高いと感じる。そして、中国が441.7円だ。昨年6月には日本より安かったのだが、ついに日本より高くなってしまった。これが冒頭に述べたことである。

 いまや、中国人や韓国人が日本に来ると、「物価が安い国だ」と感じることになる。

高いiPhoneや高い原油を買わなければならない
 以上で述べたことに対して、「物価が安いのは、むしろ良いことではないか」という意見があるかもしれない。「外国に旅行すれば確かに貧しいと感じるかもしれないが、日本にいる限り問題はないだろう」という考えだ。

 しかし、そうではない。ビッグマックの価格を見ているのは、それがその国の賃金と関連しているからだ。ビッグマックが安い国は、賃金も安いのである。

 だから、以上で述べたのは、「日本人の安い賃金では、外国の高いものを買えない」ということなのだ。

 ビッグマックの場合には、日本人はわざわざ外国の高いビッグマックを買う必要はない。しかし、日本で生産されていないため外国から輸入しなければならないものについては、高いものを買わなくてはならない。

 それを印象的な形で示しているのが、iPhoneだ。昨年9月に発表されたiPhone 13は、19万円。ずいぶん高いと感じる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/49d69c9e6d475df8adfaf0164f4cf801c417bc97