日本航空(JAL)の客室乗務員として国際線ビジネスクラス、ファーストクラスなどを含めて約5年乗務した経験を生かし、セミナー、メディアなどで活動する清水裕美子氏。『ファーストクラスCAの心をつかんだ マナーを超えた「気くばり」』(青春出版社)や人気記事『元ファーストクラスCAに聞く「機内で噂される一流の乗客」の共通点』の著者清水氏に、ファーストクラスの乗客の機内での過ごし方を聞いた。

清水氏のアドバイスから、「見返りを求めない」、「損得勘定抜きに行動する」ことで手に入る心の平安、そして備わる「人としての品」について考えてみたい。

■そもそも、「一流」の定義とはなんでしょうか?

人を「一流」や「二流以下」に分類することにはあまり意味がありませんし、したくもないのですが、いわゆるトップリーダー、社会的に「意味のある功績」を残している人々、ある専門分野における経験・知識に全幅の信頼を寄せられている人々、あるいは社会の表舞台には立たなくとも、世界をポジティブな方向に動かすそういった人々を陰で支えている人たちが、実際に「一流」の雰囲気をまとっていることが多いのもまた事実と思います。また肩書きだけでなく、その振る舞いや気くばりなど人間的な部分で人を惹きつける魅力があるのも特徴です。

ファーストクラスにそのような人たちの割合が高いので、「ファーストクラスの乗客」と総称的な表現をすることも多いのですが、もちろんクラスに関係なく「一流」の方は存在します。ここでは、私が機内でご一緒してきた中で、そのような「ハイクラスの品格」を身にまとった紳士、淑女のみなさんの例を引きながら、お話をしたいと思います。

私は現役CA時代、とくにVIPのお客様は皆、「自分軸で過ごし方をクリエイトしている」ことに気づきました。機内でも驚くほど完璧に、オーガナイズ(計画化)された過ごし方をされているのです。損得勘定がない、見返りを求めないことも、そういった社会的に「ハイクラス」の、「超一流」のオーラを漂わせた方々の共通点でした。

ファーストクラスのお客様の機内での過ごし方を見ていると、損得よりも「自分がいかに平和に快適に過ごせるか」を重要視されているように感じます。当初は「お金がある人は違うな」と他人事のように思っていたのですが、次第に、損得勘定と引き換えに自分軸や本当の意味での快適性を失っているということに気付くようになりました。ここでは、ファーストクラスのお客様が見返りを求めない理由を機内でのエピソードと共にご紹介いたします。

■ファーストクラスでも「わが家のように」過ごす

飛行機に乗るとなると、「機内食は何が出るかな」、「映画は何を観ようかな」などついサービス”に目を向けてしまいがちです。しかし、ファーストクラスのお客様は飛行機だから何か特別なことをするのではなく、過ごし方”にフォーカスされ、家の延長のような考えで過ごされているように感じます。

家では、お腹が空いていない時に無理に食べたりしませんし、疲れた時にはお休みになることでしょう。

機内でもそれと同様の発想で、自分が快適に過ごすために今何が必要かということを一番に考え、必要ないものは損得に関係なく選択されないのです。

■高級コース料理をキャンセルしてお茶漬けを食べるお客様

ファーストクラスの訓練を受けた際にとても印象に残っているのは、やはりその金額のことです。特に欧米線のファーストクラスでは片道100万円以上かかることも多いため、それに見合った質の高いサービスを提供できるようにとみっちり訓練を受け、身が引き締まる思いでした。

しかし、気合いを入れてファーストクラスのサービスに臨むとまず驚くのが、お客様が何も望まれないということです。

私自身、初めてファーストクラスを担当した際に、「今日はずっと寝て行きたいから、食事はキャンセルでお願いします」と言われ驚いたことがあります。しかし、それは決して珍しいことではないのです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f8933f0613d4f937f322de4301ae0c898bb5c33b