4日発足した岸田内閣は、「アベノミクス」を修正し、子育て世帯や中小企業への分配を手厚くする経済政策にかじを切る。格差を是正して中間層を拡大し、新たな成長につなげる。分配に必要な「果実」をどうやって生み出すのか、政策の実効性が問われそうだ。

岸田首相は組閣後の記者会見で、「私が目指すのは新しい資本主義の実現だ。成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓がコンセプト(基本概念)だ」と強調した。分厚い中間層を作って、消費や企業の投資が活性化することを目指す。新型コロナウイルスの感染収束を見据えて、新たな経済・社会のあり方を議論していく。

 具体的な政策として、〈1〉子育て世帯の教育費・住居費の支援強化〈2〉看護師や介護福祉士、保育士らの所得引き上げ〈3〉大企業が強い立場を利用して納入業者に負担を強いる「下請けいじめ」の監視強化――などを想定している。

 株式の売却益や配当への金融所得課税の強化に意欲を示し、個人間の所得や資産の格差を是正する。分配を重視して、富裕層と貧困層、大企業と中小企業、都市部と地方の格差を縮めていく。

 財務相に就任した鈴木俊一氏は4日、記者団に対し、「(首相から)分配と成長の好循環について話があった」と述べた。首相は今後、各閣僚に具体策検討を指示するとみられる。司令塔となる構想会議も設置する。

 まずは、感染対策と経済活動の両立に向け、早期にまとめる数十兆円規模の経済対策が試金石になる。経済再生相に起用された山際大志郎氏は「一寸の隙も作ってはいけない状況だ。心して確実に一つ一つ仕事を前に進めたい」と説明した。

首相が分配を重視するのは、富裕層や大企業が豊かになれば、恩恵が低所得層や中小企業に波及する「トリクルダウン」が、アベノミクスでは不十分だったとの問題意識があるためだ。

 金融緩和と機動的な財政出動で、企業業績は回復し、株価が上昇して雇用も増えた。第2次安倍内閣が2012年12月に発足し、実質国内総生産(GDP)は、12年10〜12月期の約515兆円(年率換算)から、コロナ禍前の19年7〜9月期は約558兆円に増えた。
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