米グーグルがスマートフォンを通じた銀行口座サービスの提供を見送ることが1日、明らかになった。米シティグループなどと連携して2021年に始める計画だった。自社が前面に立つ形でサービスを提供することにより金融機関の反発を招くと懸念したもようで、関連企業のデジタル化の支援に軸足を移す。

同日にグーグルの広報担当者が明らかにした。日本経済新聞の問い合わせに対し、「(金融に対する)取り組みを見直し、当社がサービス提供者となるのではなく銀行などへのデジタル化支援に注力する」と説明した。

グーグルが銀行口座サービスの提供を準備していることは19年に表面化した。20年11月にはスマホ向けアプリ「グーグルペイ」を刷新し、シティやスペイン銀行大手BBVAの米子会社などと連携して「Plex」と呼ぶ口座を米国で開けるようにする考えを示していた。

Plexでは普通預金と当座預金を利用でき、口座維持手数料や最低残高などの条件を設けずに利便性を高める計画だった。米国で事前登録の受け付けを始めており、グーグルの担当者は「簡単で安全な決済に対する需要が高いことが明らかになった」と説明した。

一定の成果があったにもかかわらず方針を転換した背景には、既存の金融機関への配慮があったもようだ。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルの計画は米金融当局の支持を得ていたが、計画を進めてきた幹部の離職を機に既存の金融機関のデジタル化支援に軸足を移す判断に傾いた。

同社はクラウドコンピューティング事業に注力し、米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなどを追い上げる姿勢を鮮明にしている。特定の業界に特化したサービスを拡充して先行企業との違いを出す考えで、金融サービスも重点分野のひとつに据えた。今後、金融機関へのクラウド提供をさらに強化するとみられる。

米国ではスマホなどで多くの利用者を抱えるIT(情報技術)大手による金融関連サービス強化の動きが相次いでいる。アップルは米ゴールドマン・サックスと連携して19年にクレジットカードの提供を始めた。一方、フェイスブックが進めてきたデジタル通貨は金融当局などの懸念が大きく、計画の見直しを余儀なくされている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01FO80R01C21A0000000/