三菱電機は1日、品質不正問題に関する記者会見を開いた。調査報告書をまとめた調査委員会は一連の検査不正の構造的な原因として「現場と本部の断絶」を指摘した。同日付で退任を発表した柵山正樹取締役会長は会見で「監督責任を痛感している」と語り、陳謝した。監督体制の強化などの取り組みが一段落したとして「けじめをつける」と話した。

柵山会長は「社長時代の最後の1年は働き方改革のフォーラムと題し年40数回現場に行った。現場の意見を聞いたつもりだったが、(目を向ける)タイミングが遅かった」と振り返った。

同報告書によると、6月に明らかになった鉄道車両向け機器での検査不正について「『品質に実質的に問題がなければよい』という安易かつ誤った正当化が行われていた」などと指摘した。その上で「内向きで閉鎖的な組織風土やコスト増となる施策へのディスインセンティブなどが背景にあった」と結論づけている。

検査不正は長崎製作所(長崎県時津町)で鉄道向けの空調装置や空気圧縮機を対象に行われ、35年以上にわたって顧客との契約とは異なる方法で検査したり、検査を省略したりしていた。架空のデータを自動で生成するプログラムの存在も明らかになっている。

報告書では35年間にわたり不正検査が続いた背景について「けん制機能を果たすべき品質部門の独立性が確保されず質も量も脆弱だった」「本社部門と現場との間に断絶があった」とも指摘した。報告書は「問題の重大さに鑑み、経営陣はその経営責任を明確化する措置を講じるべきだ」と求めた。

同日、会見した調査委員会の木目田裕委員長は、製造現場が不正を認識しながら「『言ったもん負け』、『(本部に)助けを求めても助けてくれない』という声があった」と話す。今回の調査ではアンケートなどを通じ、延べ2305件の不正に関する報告があったという。

三菱電機は柵山正樹会長が1日付で辞任したと発表した。同日の取締役会で申し出て受理された。取締役も退任し、シニアアドバイザーに就いた。経団連副会長も同日付で辞任した。前社長の杉山武史氏は不正発覚後、7月に社長を辞任していた。

再発防止策も公表した。10月1日付で社長直轄の「品質改革推進本部」を設置し、本社主導で品質保証体制を構築する。本部長には半年後をメドに外部人材を招く。社内風土改革を推進するプロジェクトチームも設置する。ガバナンス強化に向けては専門家による「ガバナンスレビュー委員会」を設置して検証体制をつくる。
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