ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は15日、オンラインで開催した講演で、「日本復活の鍵は『スマボ』。人工知能(AI)で臨機応変に自ら学ぶスマートロボットがあらゆる産業の労働力を置き換えていく」と述べた。傘下のファンドなどを通じてロボット分野で計18社に出資しており、「日本企業にも続々とサービスを提供したい」との考えを示した。

法人顧客向けイベント「ソフトバンクワールド2021」で講演し、「日本は1980年代に世界一の技術で経済をけん引したが、いまは労働人口が減り、生産性も低迷して危機だ」と語った。孫氏は携帯電話の主役が「ガラケー」と呼ばれる従来型端末から米アップルの「iPhone」などスマートフォンに交代したことに触れたうえで、「製造現場で普及している、人によるプログラミングで決まった操作をするロボットは『ガラボ』だ。今後はAIで自ら学ぶ『スマボ』に変わる」などと強調した。

講演ではヒト型ロボットのほか、医療、物流、清掃、飲食店の配膳向けにAIを活用したロボットを紹介した。AIロボットはプログラミングの手間を省けるうえ、24時間稼働し各産業の競争力が約10倍高まると指摘。孫氏は「『スマボ』を1億台導入できれば、10億人の労働人口に相当する」として、傘下のソフトバンクやソフトバンクロボティクス(東京・港)を通じて、投資先による日本でのサービス展開を支援する考えを示した。

SBGは傘下のファンドを通じて、世界のAI関連のユニコーン(評価額10億ドル=約1100億円以上の未上場企業)を中心として約300社(投資完了前の43社含む)に投資している。ロボティクスを重点分野の1つに据え、倉庫内の商品配送向けロボットを開発するノルウェーのオートストアなど計18社に出資した。「自動運転から手術、清掃、倉庫など何から何まで最先端の『スマボ』企業軍団をつくった」という。

一方で、SBGのファンドの役割について「基本的に自らオペレーションするより、各企業の成長を資本家の立場で支援する」と述べた。21年に入り、子会社だった米ロボット開発のボストン・ダイナミクスの大半の株式を韓国の現代自動車グループに売却し、SBGは出資比率を20%に下げた。かつてはヒト型ロボット「ペッパー」を開発して事業化したが、投資に集中する姿勢を強めている。
2021年9月15日 13:09
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC150EX0V10C21A9000000/