日本の評価は地に落ちた
「ドイツをはじめとした欧米各国では、国民の半数近くがコロナワクチンの接種を1度は受けています。接種が完了した人には外出制限を緩めたり、マスクを外しても構わないという動きも出ている。

しかし翻って日本は、ワクチンに関して信じがたいほど遅れをとっています。きわめて困難な状況に陥っているにもかかわらず、東京五輪を強行しようとしているのは、日本人の高いプライドのなせる業なのでしょうか」

こう語るのは、ドイツ・ボン大学国際哲学センター所長のマルクス・ガブリエル氏だ。

世界的ベストセラー『なぜ世界は存在しないのか』などで著名なガブリエル氏が住むドイツでは、昨年12月26日からコロナワクチンの接種が始まった。

5月末時点で全国民の4割強、約3500万人が1回以上の接種を終え、7月中には全国民が接種を完了する見通しだ。

五輪は「危険なバクチ」
米有力紙ワシントン・ポストは5月5日、「なぜ日本は、これほどワクチン接種で大失敗を喫しているのか」との記事を掲載し、こう評した。

〈世界最高の物流能力で名高い日本が、富裕国クラブであるOECD加盟37ヵ国の中でぶっちぎりの最下位を走っている〉

〈日本は根本的に変われるか否かの瀬戸際にいるのだ〉

いまや世界中が、日本が「コロナ敗戦」を喫しつつあることに驚き、失望し、そして懸念を表明している。

それはほかでもない、開会式まで残り2ヵ月を切った東京五輪を、開催するか否か――その決断の時が、ついに迫っているからだ。

本誌は、冒頭で紹介したガブリエル氏をはじめ、世界的知性と呼ばれる海外の研究者やノーベル賞受賞者、さらにジャーナリスト、スポーツ関係者や医療従事者に日本のコロナ対策の現状をどう評するか、そして東京五輪の開催可否をどう見るかについて訊いた。

すると誰もが、口を揃えて「東京五輪開催はありえない」と語った。

「日本のワクチン接種の異常な遅れは、とても先進国とは思えないレベルです」

こう断じるのは、ハーバード大学教授で世界的心理学者のスティーブン・ピンカー氏だ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83554