国立がん研究センターは27日、2008年にがんと診断された人の10年後の生存率が59.4%だったと発表した。全国で専門的ながん治療を提供する病院の患者約23万8千人の大規模データを初めて使って10年生存率を算出した。

これまでは、先駆的な治療を提供するがん専門病院の患者データを基に10年生存率を算出しており、少しずつ向上してきた。今回の生存率と単純比較できないが、04〜07年にがんと診断された人の10年生存率の58.3%を上回っている。

今回は全国の「がん診療連携拠点病院」など240施設のさまざまな患者のデータを扱っており、より正確に状況を反映しているという。

がんの種類別で生存率が低かったのは膵臓がん(6.5%)、小細胞肺がん(9.1%)、肝内胆管がん(10.9%)だった。一方、最も高かったのは前立腺がん(98.7%)、乳がん(87.5%)、子宮内膜がん(83.0%)だった。

がんの進行度別では、早期の「1期」に比べて他の部位に転移した「4期」の生存率が低く、早期に発見し、治療を始めるほど経過がよい傾向が見られた。

また、12〜13年の5年生存率は67.3%で、10〜11年と比べて0.9ポイント上がった。がんの種類別の傾向は、10年生存率とほとんど同じだった。

若尾文彦・がん対策情報センター長は「最近は免疫チェックポイント阻害薬などがんの治療技術も進んでおり、今後さらに生存率が改善する可能性がある」としている。〔共同〕

2021年4月27日 13:16
日本経済新聞
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