日銀は19日の金融政策決定会合で、金融緩和の長期化を見据えた政策修正を決めた。上場投資信託(ETF)購入は原則年6兆円の目安を削除した。株高局面は購入を見送り、市場の混乱時に積極的に買う姿勢を明確にした。買い入れ対象は東証株価指数(TOPIX)連動型のみとする。将来のマイナス金利深掘りを可能にするため、金融機関に上乗せ金利を付ける制度もつくる。

日銀は18日から2日間の日程で決定会合を開いた。今回は政策点検の結果を示し、必要な政策修正を実施した。黒田東彦総裁が19日午後に記者会見を開き、決定内容を説明する。

ETFの購入は昨年3月に新型コロナウイルス対応で設けた年12兆円の上限をコロナ収束後も継続し、市場混乱時など必要に応じて買い入れを実施するとした。一方、原則で年6兆円としていた購入の目安は削除した。株高局面では購入を見送り、危機時の対策という位置づけを明確にした。

ETFの買い入れ対象は指数の構成銘柄が最も多い東証株価指数(TOPIX)連動型のみとし、日経平均株価連動型は外す。

不動産投資信託(REIT)の購入も上限の年1800億円は継続する一方、原則年900億円の目安は削除した。

短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は大枠を維持したうえで運営方法を変える。

まず長期金利は従来プラスマイナス0.2%程度としていた変動幅を同0.25%程度と若干広げ、声明文に明記した。金利が変動しやすくして、金融機関が国債売買などで収益を上げる機会を広げる。一方、金利が大幅に上昇する場面では、特定の年限の国債を固定金利で無制限で買い入れる措置を連続して行う「連続指し値オペ制度」を導入することも決めた。

短期金利や長期金利には、急な円高進行時など必要な局面で機動的に引き下げに動けるように「貸出促進付利制度」という制度を新設した。日銀の貸出支援制度の残高に応じ、金融機関が日銀に置く当座預金に上乗せ金利を付ける。例えば、短期金利をマイナス0.2%に下げた場合、上乗せ金利は最も高くてプラス0.2%以上として影響を和らげる。

市場では、一段の利下げは収益の悪化する金融機関が融資に慎重になり、逆効果になる恐れもあることから、日銀は動けないとの見方が多かった。新制度には、こうした追加緩和の「限界論」を払拭する狙いがあるとみられる。

日銀が目標とする2%の物価上昇は遠く、米欧の中央銀行もコロナ対応の金融緩和を長期間継続する姿勢を示している。日銀の大規模緩和もさらなる長期戦が避けられないが、これまでの政策で金融機関の収益悪化や市場機能の低下など副作用も蓄積している。日銀の一連の政策修正は、副作用を極力抑えて緩和の持続力を高めつつ、必要な場面で緩和強化に動ける余力をつくる狙いがある。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF1924C0Z10C21A3000000/