ネスレ日本代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏、プロサッカー選手であり事業家・投資家としても活躍する本田圭佑氏、FiNC Technologies創業者の溝口勇児氏──ベテラン経営者、ビジネスにも明るい著名人、スタートアップ起業家がタッグを組み、鳴り物入りでスタートしたはずだったベンチャー支援・ファンド運営のWEINグループが大きく揺れている。

昨年末から溝口氏とその他の経営陣の対立が続いた結果、グループ会社では(詳細は後述するが、WEINグループは実質的なホールディングス会社、その傘下で事業を行うグループ会社2社、溝口氏の資産管理会社、ベンチャー投資ファンドからなる)は、1月末までにほぼすべての社員が退職。2月19日には、グループ会社の代表退任、ファンドのGP(無限責任組合員:ファンドの責任者となる出資者)の退任などが相次いだ。冒頭に挙げた高岡氏、本田氏の2人もファンドを離れており、溝口氏だけが残った状態だ。

外からの風当たりも厳しい。グループ会社2社に投資するベンチャーキャピタル(VC)や事業会社はWEINグループのガバナンスの不備を非難。投資資金の回収を求めて手続きを進めている。またファンドのLP(有限責任組合員:有限責任の出資者)は、全員一致でファンドの解散を要求している。

WEINグループは2020年5月に設立を発表し、同年11月に資金調達やグループ会社の設立を発表したばかり。2月に入ってからはSNS上で、同社グループへインターン入社や、グループで運営するコワーキングスペースへの入居に関する報告も散見されるが、実態としては組織崩壊のまっただ中と言っても過言ではない。本稼働して半年も満たない組織に何が起こっているのか。

ファンドは溝口氏を除いて脱退、LPからも解散請求の非常事態
華々しくスタートしたWEINグループであったが、現在は苦しい状況にあるようだ。そのきっかけになったのが、「2月19日」という日付だ。

記事冒頭にあるように、この日には、0号ファンドからGPであった高岡氏、本田氏、西本氏が退任し、溝口氏だけが残るかたちになった。またWEIN FGからは代表だった岡本氏、武内氏が退任。代表には溝口氏が就任した。実質的に、WEIN IGをを除くすべてのグループを溝口氏が管掌することになったのだ。

一方では、冒頭にあるとおりファンドのLP10人全員の連名で、ファンドの解散を求める書面が提出されるという事態にまで発展している。ファンドの解散はGP全員、もしくはLP全員の同意をもって行われるため、GPである溝口氏がこの請求を受理して手続きを取ればファンドは解散となる。とはいえLP各人には、ファンドの投資実行に対して影響を行使するような権限はない。解散を求められても、現時点でファンド運営に制限がかかる状態ではない。しかしそういった「いわく付き」のスタートアップになってしまうと、次のラウンドでの資金調達に影響が出る可能性もある。

0号ファンドはすでに複数のスタートアップへの投資を実行している。本田圭佑氏が代表取締役を務める、動画・音声配信サービス運営のNowDoなども投資先だが、同社などはファンドからの株式買い戻し(株を買い戻し、出資された資金を返金する)を進めているという。

昨年12月に起こった経営陣から溝口氏への「退任要求」
これらの動きは、何も降って湧いたものではない。実は昨年11月の会見直後からWEINグループ内では溝口氏と、高岡氏や本田氏、西本氏ら経営陣(編集注:ファンドのGPと子会社経営陣を含むが、兼任している西本氏などもいるため、便宜上「経営陣」で統一する。なお、経営陣は2月19日をもって全員が退任している)の間で確執があったのだという。

その確執が決定的になったのが、2020年12月1日。この日は溝口氏、経営陣を初めとするWEINグループのほぼ全スタッフがとあるホールに集められ、2時間半にわたるミーティングが行われた。海外にいる本田圭佑氏らはZoomでの参加となったが、本田氏を含む経営陣らは、2時間半に渡って溝口氏に対して、WEINグループの事業から離脱することを求めた。

以下ソース
https://signal.diamond.jp/articles/-/588