ベスト電器は7月1日付で、同じヤマダホールディングス(HD)傘下の企業とともにヤマダデンキに統合される。店舗の形態や会員制度などは変えず、屋号や従業員の雇用も維持される。22日記者会見したベスト電器の小野浩司社長は「長い歴史に幕を閉じるのは感慨深いが、効率運営のための経営判断だと十分理解できる」と話した。

小野氏はヤマダデンキの社内カンパニーである、九州ヤマダの会長に7月1日付で就任する。九州ヤマダは九州にあるヤマダやベスト電器など約230店舗の運営に当たる。

ヤマダHDは今回の統合により、事業の効率化とガバナンス強化を目指す。会社統合に伴う店舗の統廃合はしない。ベスト電器社員はヤマダデンキの社員となり、ベスト電器以外の店舗で勤務する場合もある。小野社長は「ベスト電器の強みは客の立場に立った接客。ヤマダデンキの社員となることで、他の場所でも成長してほしい」と期待した。

ベスト電器は1953年に設立され、九州を地盤に全国へ展開。1970年代後半から90年代にかけては売上高で業界首位になった。ただ、小野社長が「時代の流れを捉えることができず、変化に対応できなかった」と話すように、小規模店での対面接客を重視した同社は大型店の広がりや価格競争について行けず、徐々に経営が厳しくなった。2012年にヤマダ傘下に入り、17年には完全子会社となった。

ベスト電器の2020年2月期は売上高1325億円だった。家電量販店は新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり」やテレワークの需要拡大で、パソコンやテレビ、調理家電など幅広い製品の売り上げが好調だ。経営効率化でさらなる成長を目指す。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC215080R20C21A1000000