政府が新型コロナウイルス対策で首都圏に緊急事態宣言を再発令する検討に入ったことを受け、観光業界からは再び悲鳴が上がった。営業時間短縮を迫られる飲食店は十分な協力金を得られるか注視。小売業界は、政府・自治体の要請内容を見極めて今後の対応を判断する構えだ。

「緊急事態宣言はやむを得ない。できるだけ短い期間で済むよう願うしかない」。政府の再発令が視野に入った4日、航空大手の関係者はこう語った。需要喚起策「Go To トラベル」の再開も見通せない中、旅行大手は「重苦しい雰囲気に覆われている」(広報)と業界の窮状を代弁した。

 外食チェーン大手は営業時間短縮に関し、「正式要請があれば応じる可能性が高いが、営業できる時間と協力金次第の面がある」(広報担当者)と支援策の充実を求めている。

 昨年4月に緊急事態宣言が発令された際、飲食店の休業や短縮営業で、たる入りなど業務用のビール販売は8割ほど減った。あるビール大手関係者は「ビール類の消費が減るのは間違いない」と覚悟した上で、「消費者心理全体が冷え込むことが怖い」と景気への悪影響にも懸念を示した。

 東京・銀座など大都市圏の主力店が臨時休業に追い込まれた百貨店業界は、「(要請内容が)具体的に決まれば対応する」(大手)としている。

 総合スーパーの大手チェーンや大手コンビニエンスストアは、再宣言時の営業体制について、「要請内容を見てから検討する」との姿勢。NTTドコモなど携帯電話各社は店舗の営業時間短縮や取り扱い業務の絞り込みを検討する見通しだ。

 昨年の緊急事態宣言の際、大手企業を中心に事務職の在宅勤務を増やし出社人数を減らす動きが進んだ。しかし、5月下旬の宣言解除後、出社人数は再び増えた。

 在宅勤務の拡大は「現時点では考えていない」(製造業大手)と様子見の企業は多い。再宣言が人の接触をどこまで減らし、感染拡大防止に効果を発揮するかは見通せない。 
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