どうも成果を強調した“大本営発表”の記事ばかりが目に付く。
しかし過大評価は禁物で、環太平洋経済連携協定(TPP)が1軍だとしたら、RCEPは3軍レベルの貿易自由化だ。

 こうした自由貿易協定では、まず関税撤廃率が注目される。
RCEPは参加国全体で91%となり、決して高くない。自由貿易協定には明示的なルールがあるわけではないが、国際的な相場観、慣例というものがある。
それは90%を超えることが目安だ。ちなみにTPPでは99%であった。

 しかも日本にとっては、中国と韓国の関税撤廃のレベルの低さが問題だ。
日本からの輸入品で見れば、中国は86%、韓国は83%にとどまって及第点ぎりぎりだ。

 そして、関税撤廃率だけを見て輸出拡大につながるとするのは早計だ。

 15〜20年間といった時間をかけて撤廃するものも多い。
特に自動車部品がそうで、完成車は関税撤廃の対象外だ。電気自動車(EV)用電池材料の一部も16年目で撤廃するが、中国は2035年にはEVを50%にする計画で、16年後には既に勢力図は固まっている。

 即時撤廃する品目には、もともと数%の低関税品や、中国企業に価格競争力が既にあって関税を撤廃しても影響の少ないものが当然選ばれている。

 日本の経済界が歓迎するのは当然だが、輸出拡大の効果は限定的だ。
大本営発表らしい「対中韓貿易に弾み」との見出しも、割り引いてみた方がよさそうだ。

 ただし、原産地証明など貿易手続きのルールの統一は地味だが、意外とビジネスの現場では重要だ。
東アジアで部品供給網(サプライチェーン)を構築している日本企業にとってありがたいことである。
見栄えがしないと取り上げないのが、メディアの悪い癖だ。