言葉には力がある。つくづくそう思う……。「おいおい、木村はいったい何を言い出すんだ」といぶかる読者もいるだろうが、別に奇妙な話をしようというわけではない。例えば、あまりに普通になりすぎていて誰も気に留めなくなった問題であっても、鋭い言葉で斬れば耳目を集め、多くの人が問題の本質に気付いたりする。老朽化した基幹系システムの問題を指摘した「2025年の崖」はその典型例だろう。

 「2025年の崖」ほど大げさな言い回しではないが、最近そんな力のある言葉に出くわした。あるCIO(最高情報責任者)がIT部門の外部委託に対して次のような苦言を呈していた。「数年に1度のシステム開発のために多くの技術者をIT部門に抱え込めないから、開発をITベンダーに外部委託するのは分かる。だけど、ITベンダーの技術者を10人以上も常駐させてIT部門の業務を任せるのは外部委託ではない。それは単なる外部依存だ」。

 私はこの話を聞いて「ほぉ」と思った。心に響いたのは「外部依存」という言葉だ。どうやら他の人たちにも響いたようで、この話をTwitterでつぶやいたところ、多くのフォロワーがリツイートしたり、「いいね!」を寄せてきたりした。「外部委託ではなく外部依存とは言い得て妙」などのコメントもあり、この言葉に腹落ちした人が多数いたようだ。

 この「極言暴論」の熱心な読者ならよくご存じかと思うが、システムの保守運用業務の外注に関わる問題は、私も何度も追及してきた。ただし、その際に私が使ってきた言葉は「丸投げ」だ。この言葉もそれなりに刺激的ではあるが、「外部依存」と言ったほうが確かに腹に落ちる。ITベンダーの技術者の客先常駐を巡る様々な問題が有機的につながり、それらの問題の本質も見えてくる。

 企業の規模を問わず、今やほとんどのIT部門はITベンダーの常駐技術者がいなければ業務が回らない。「他の仕事が忙しくて手が回らないから、システムの保守運用は外注に任せた」といった単なる丸投げの域をはるかに超えてしまっている。素人化したIT部門は「外注さんがいないと何もできない」状態で、まさに外部依存という言葉がふさわしい。

 しかも、外部のITベンダーという企業組織に依存しているのならまだよい。そうではなく、常駐技術者に属人的に依存してしまっているから問題が一段と深刻になっている。しかも常駐技術者に依存しているのはIT部門だけでない。利用部門もIT部門と別の観点で依存している。後で述べるが、これが大問題を引き起こす。SIerもしかり。システムの保守運用の業務委託は客とSIerの契約であっても、客先に常駐するのは下請けITベンダーの技術者だったりするからだ。
以下ソース
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00148/073000128/