複数の米メディアは31日、トランプ政権が中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する米国事業を売却するよう命じると報じた。中国政府への個人情報の流出を防ぐ目的だという。

トランプ氏は31日、ホワイトハウスで記者団に対し「ティックトックを禁止するかもしれない。別のことも検討している。どうなるか見てみよう」と語った。

ティックトックを巡ってはポンペオ国務長官が7月上旬に利用禁止を検討していると明らかにして政府内で安全保障への影響を精査してきた。

一方、米ニューヨーク・タイムズ(電子版)など複数の米メディアは31日、米マイクロソフトがティックトックの買収に向けた交渉を進めていると報じた。

ティックトックは2016年に中国のインターネット企業、北京字節跳動科技(バイトダンス)が始めた。17年には米国で動画アプリを提供していた米ミュージカリーを買収して両社のサービスを統合した経緯がある。現在も「中国版」とミュージカリーの流れをくむ「海外版」が併存している。

マイクロソフトは海外版を運営するバイトダンスの米子会社、ティックトックを買収する交渉を進めているもようだ。ティックトックの広報担当者は31日、日本経済新聞に取材に対して「噂や臆測にはコメントしないが、ティックトックの長期的な成功を確信している」などと説明した。

米子会社をめぐってはバイトダンスに出資する米国を地盤とする株主が株式の過半を取得して中国色を薄め、サービス提供の継続を目指すとの観測もある。世界最大のユニコーン企業(企業価値が10億ドルを上回るスタートアップ企業)であるバイトダンスにはソフトバンクグループも傘下のファンドを通じて出資しており、同社の事業戦略にも影響しそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62192330R00C20A8I00000/