【ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は1日の記者会見で、トランプ米大統領がWHOから脱退すると表明したことに対し、「協力関係が続くことがWHOの願いだ」と強調した。世界の公衆衛生の改善に米国の協力は不可欠との認識を示し、脱退宣言の撤回を期待した。

米国はWHOへの資金の最大の出し手で、お金は途上国でのワクチン接種などの普及に使われている。テドロス氏は「米国は世界の公衆衛生に大きな変化をもたらした」と称賛した。「世界は長い間、米国民と米政府の力強い協力の恩恵を受けてきた」と述べた上で、今後の関係継続を訴えた。

WHOの運営を中国寄りと批判するトランプ氏は5月29日、「必要な改革をしなかったため関係を絶つ」と表明した。ただ、具体的な時期などは明らかにしていない。WHOは、米国から正式な脱退通知は届いていないと説明している。

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米国では白人警官の暴行による黒人死亡事件への抗議デモが広がっている。WHOはデモへの直接の言及はしなかったが、「人々の密接は(感染を広げる)リスクを高める」(感染症専門家マリア・ファンケルクホーフェ氏)と警告した。
2020/6/2 2:52
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59857650S0A600C2000000/