【広州=比奈田悠佑】中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)とホンダは車載IT(情報技術)システムの開発で提携すると発表した。中国国内で車を運転しながらオンライン決済や音声エンターテインメントなどを安全に円滑に利用できる仕組みの構築を目指す。テンセントにはスマートフォンやネット利用者の増加が鈍化しつつあるなか、事業領域を広げる狙いがある。

テンセントとホンダの中国法人は18日、テンセントの自動車向けITシステム「TAI」をホンダ車に搭載することを目指して協業すると発表した。TAIはテンセントがスマホの対話アプリ「微信(ウィーチャット)」などで培ったノウハウを車載向けに応用したシステムで今回、ホンダ車用に機能を作り込む。

例えばドライブ中、音声操作で道中のカフェのコーヒーを注文、オンライン決済で支払いを済ませて店頭で受け取るといった用途を想定している。そのほかテンセントが版権を持つ音楽やネットラジオの配信、新聞や書籍の音声読み上げといった娯楽機能も盛り込めるという。

テンセントは従来得意としていたパソコンやスマホ向けITから事業領域を拡大しようとしている。同社の主力アプリ、ウィーチャットの利用者数は2020年1〜3月期に12億人に達した。ただ前年同期比の増加率は8%にとどまり、30〜40%増えていた15年ごろからは鈍化が著しい。自動車など新領域の開拓で高い成長率を維持したい考えだ。

2020/5/20 12:14
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59324510Q0A520C2FFE000/