シンガポール政府は12日、新型コロナウイルスの感染が急激に広がった外国人出稼ぎ労働者の寮で、30万人超の住居者全員にウイルス検査をすると発表した。抗体検査とPCR検査を組み合わせて実施する。6月1日の経済再開に向け、感染拡大リスクを抑えつつ労働者を職場復帰させる狙いだ。

感染者の多い寮では抗体検査をし、すでに感染して抗体のある労働者は職場復帰を認める。抗体のない労働者や感染者の少ない寮ではPCR検査をし、未感染で健康な人が仕事を再開できるようにする。感染者は港の埠頭や展示会場などに設置した臨時施設や病院で隔離や治療をする。

同国の新型コロナ感染者は11日までで2万3千人強。うち9割が寮に住む外国人労働者だ。主にバングラデシュやインドなどからの出稼ぎで、建設現場や造船所などで働く人が中心だ。大部屋での共同生活がウイルスの温床となり、4月に入ってから感染急増を引き起こしたため、一部を除き寮をまるごと隔離している。

外国人寮の過去1週間の新規感染は「安定した」(ガン・キムヨン保健相)ものの、無感染者の検査を始めたこともあり、1日平均700人とまだ多い。一方、一般の国民などの新規感染は1日1ケタに減った。厳しい移動制限や事業の閉鎖を、6月以降いかに安全な形で緩和するかに焦点を移す。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59019580S0A510C2EAF000/