新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、その影響は雇用や賃金にも及び始めている。「年収2割減時代」の足音が確実に忍び寄る中、日本経済はV字回復の軌道を本当に描くことができるのだろうか。この数年、企業も個人も期待を寄せた「所得増加大作戦」。その計画が綻び始めている現状を追った。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月末から臨時休園が続く東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)。JR京葉線舞浜駅周辺は、開通以来初の閑古鳥が鳴き、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの76のアトラクション、86の商品施設、91の飲食店はすべて封鎖状態にある。そんな同社の労働組合に4月15日、TDRを運営するオリエンタルランドより“吉報”が届いた。そこに勤める非正規労働者約2万人の休業補償額を引き上げるというものだ。

労働基準法26条では、会社都合の休業の場合、残業代や通勤手当も含めた直近3カ月分の平均賃金の少なくとも60%を支払うことが企業に義務付けられている。これに対し、組合側は「営業再開の見通しが立たない中、法定最低基準の6割ではとても生活できない」として3月、補償の増額をオリエンタルランドに要望していた。

 関係者によると、今回の会社側の提案は「3〜5月分の給与補償額について、6割から積み増して、約8割に相当する額を支給する」というもので、一定の範囲ながら組合側の要求を会社側が受け入れた。本家の米ディズニーが約10万人のスタッフへの給与を突如ストップさせるなどの状況に陥っていることに比べれば、はるかに恵まれた条件と言える。

 だが、事情を説明する組合担当者の声は、当然のことながら暗い。

膨らむ“夢の国”の不安
 全従業員約2万3000人(2019年4月1日時点)のうち8割を占める“夢の国”の非正規労働者。彼らが抱える不安は2つある。1つは、補償が増額されたとはいえ、休業が長引けば「収入2割減」の状況が続くこと。そして何より、ここ数年、オリエンタルランドが曲折ありながらも進めてきた「社員の所得増加計画」が、今回のコロナ問題によって暗礁に乗り上げかねないことだ。
以下ソース
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00153/042200001/