安倍晋三首相が議長を務める諮問会議「未来投資会議」やその分科会の議事メモはこれまで公表されていたが、今年1月の会議だけは公表されなかったことが本誌の調べでわかった。東洋大教授でオリックス社外取締役の竹中平蔵氏(69)が会長を務める会議で、空港事業などについて議論された。内容を知るべく情報公開請求したところ、開示された資料の一部は黒塗りだった。

その会議が開かれたのは1月15日──。

 諮問会議「未来投資会議」は安倍政権が「成長戦略の司令塔」と位置づけ、2016年9月に発足した。アベノミクスの政策に強い影響力を持つことで知られ、会議は議長である安倍首相、菅義偉官房長官ら10人の閣僚と、学識経験者や企業経営者ら7人の民間議員で構成される。竹中氏は、同会議の発足と同時に東洋大教授という肩書で民間議員に就任した。

 現在は同会議の分科会「構造改革徹底推進会合・第4次産業革命会合」会長として、空港や水道など公共インフラの管理や運営を民間企業が担うコンセッション(公共施設等運営権)の政策とりまとめを担当している。分科会で議論された内容は、安倍首相らが出席する未来投資会議に政策提案される仕組みだ。

 未来投資会議や分科会などが開かれると、会議で使用された資料、議事録の骨子をまとめた議事メモは首相官邸のホームページで随時、公表されていた。ところが、1月15日の会議については資料や議事メモなどが掲載されていない。会議が開かれた事実もわからず、存在そのものが非公表の状態だ。その理由は何なのか。

 当日の会議室には、内閣府のほかに国土交通省や厚生労働省など五つの省庁の官僚が集められたという。霞が関関係者がこう話す。

「部屋の広さが限られていたので、前半と後半で入れ替え制に。各議題の進捗状況について、順番に竹中氏に報告する形式でした。そこで竹中氏が官僚に提出させた資料の一部に、省庁が非公開を求めていた内部資料が複数あったのです」

竹中氏は小泉内閣で総務相などを務め、郵政民営化などを担当したが、06年に政界を引退。大学教授として教鞭をとるかたわら、人材派遣会社パソナグループ会長やオリックス社外取締役などを歴任している。

「内部資料の一つが、空港の民間運営事業に関するもので、国交省が各空港の財務状況を分析したものでした。竹中氏が社外取締役を務めるオリックスは、民営化された関西国際空港などの運営に参入している利害関係企業です。そのため、国交省内からも資料開示に慎重な意見がありました」(同前)

 オリックスは15年、仏空港運営大手のバンシ・エアポートとの企業連合などで、国が100%出資する新関西国際空港会社から関西空港と大阪(伊丹)空港の運営権を獲得。契約期間は59年度までの44年間で、オリックス連合などが支払う運営権対価は総額2兆2千億円にのぼる。18年4月からは、神戸空港の運営権も獲得し、関西3空港の一体運営をしている。

 国交省が内部資料の公開をためらったことは、この日から2カ月前の19年11月18日に開かれた分科会の議事メモにも記されていた。竹中氏は国交省の平岡成哲・航空局航空ネットワーク部長に、日本国内で民間が運営する空港について、その価値を示す「EBITDA(イービットディーエー)」と、空港事業を落札した時に業者が支払う運営権対価の比率の開示を求めた。

 EBITDAは、1年間の営業で得られた現金(キャッシュフロー)をあらわす。投資家が企業分析をする際によく使用される指標の一つだ。

 分科会で竹中氏は、他国の空港と比較して日本の運営権対価が高いのではと問題視し、平岡部長に数字の開示を求めた。

 そこで竹中氏は、<数字は、どうして開示できないのか。もし、法的に予定価格を類推するので、できないということなら、会計法を所管する財務省から正式な解釈を航空局としてとって、お示しをいただきたい>と訴えた。

 だが、平岡部長は運営権対価は国際水準から高くないと否定した上で、<数字を公開の場でお示しをするという形になりますと、運営権対価の期待値を、いわば申し上げる話になってしまいますので、今後のコンセッション案件に対する影響があるのではないか>と慎重だった。

それでも、最終的に平岡部長が<(竹中氏に)個別に数字を示して、ご説明をさせていただきたい>と応じる格好となった。

 その内部資料が、1月15日の非公表会議で示されたのだ。
以下ソース
https://dot.asahi.com/wa/2020042700094.html?page=1