名古屋税関が21日発表した3月の管内貿易概況によると、中国向けの自動車輸出が前年同月比36%増の143億円だった。増加は2カ月ぶり。新型コロナウイルスの感染が収まりつつある中国で自動車の需要が復調している。トヨタ自動車グループなどは日本からの輸出や現地生産の拡大で対応を急ぐ。

管内の中国向け輸出は全体だと15%減の2168億円だった。2カ月ぶりの減少で、化学製品や電子部品などが落ち込んだ。米国向けは19%減の4025億円、欧州連合(EU)向けは19%減の2024億円だった。米国とEU向けの自動車輸出は2ケタ減だった。

世界的に自動車の需要が落ち込む中、中国では生産や販売が復調している。公共交通機関を利用することの不安もあり、自動車への関心が高まっているのも大きい。

4月中旬、名古屋港のトヨタ自動車東海センター(愛知県東海市)に巨大な自動車運搬船が接岸した。センターには中国などに出荷する何百台もの新車がずらりと並んだ。

中国にあるトヨタの4工場は2月上旬にすべて停止したが、同月中旬から段階的に再開し、3月末に正常稼働に戻った。「中国の工場はフル稼働だが、一部で販売に生産が追いつかない」(トヨタ関係者)という。日本からの輸出拡大で現地生産でまかないきれない分を補う構えだ。

中国での自動車生産の回復は、自動車部品メーカーの中国向け輸出にプラスに働く。ある中部の部品メーカーの2月の受注は計画比で半減したが、4〜6月は計画を1〜2割ほど上回りそうだという。「中国でのトヨタ向け受注は回復基調だ」と説明する。デンソーも「自動車各社の生産再開に伴い、中国への部品輸出は戻りつつある」とする。

2020/4/21 10:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58293600R20C20A4L91000/