【ニューヨーク=中山修志】米事務機器大手ゼロックスは31日、米パソコン・プリンター大手HPへの敵対的TOB(株式公開買い付け)を撤回すると発表した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により両社ともに株価が急落し、事前に決めた条件での買収が困難になった。米有力企業を巡る買収劇がコロナ危機によって頓挫する結果となった。

ゼロックスは同日、「コロナウイルスによるマクロ経済と市場の混乱で買収計画を継続できない環境になった」と声明を発表した。HPの株主総会に提案する予定だった取締役メンバーの刷新案も取り下げる。

ゼロックスは2019年11月、時価総額でおよそ3倍に及ぶHPに対し、総額3兆円を超える1株22ドルでの買収を提案した。HPは「評価が低すぎる」としてこれを拒否。ゼロックスは条件を1株24ドルに引き上げ、3月2日に敵対的TOBに踏み切った。

だが、コロナウイルスの影響に伴う株安でTOBの開始時に21ドル台だったHPの株価は足元17ドルに下落した。32ドル台だったゼロックス株は18ドルまで下げた。同社はみずほフィナンシャルグループなどから買収資金として総額240億ドル(約2兆5000億円)の融資の約束を取り付けたが、仮に買収が成立しても時価総額を上回る負債を抱える状況になっていた。
2020/4/1 6:06
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57497050R00C20A4000000/