25日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続伸している。前場は前日比1036円高の1万9129円で終えた。新型コロナウイルスの世界的な感染の広がりを受け、各国政府が相次いで異例の経済対策に乗り出したことから、いったん反発局面を迎えている。しかし、感染の拡大は止まらず、実体経済への影響もこれから深刻化する。油断は禁物だ。

前日の米ダウ工業株30種平均は2112ドル(11.4%)高の2万0704ドルと過去最大の上げ幅を記録した。QUICK・ファクトセットによれば、上昇率は1929年以降の大恐慌期に当たる33年3月15日(15.34%)以来、87年ぶりの大きさだ。きのうの上昇は「世紀のリバウンド(自律反発)」と言えるだろう。

日経平均も19日の安値(1万6552円)からきょうの高値(1万9187円)まで3営業日で16%上昇した。過去のショック時の反発局面と比較すると87年10月の世界同時株価急落「ブラックマンデー」時に記録した2営業日で11%をしのぐ勢いだ。2008年秋のリーマン・ショック時は10月27日の安値から11月5日まで6営業日で33%上昇した。

米国の与野党が経済対策で合意するとの観測が広がったことがCTA(商品投資顧問)などの買い戻しを誘発している。マッコーリーキャピタル証券で日本人顧客向けのセールストレーディングを担う増沢丈彦氏は「中長期目線の投資家は様子見姿勢を崩していない」と話す。

24日のニューヨーク証券取引所(NYSE)の売買高は16億9764万株。直近ピークの20日からは37%減少した。米国は取引所外取引が発達しており、NYSEの数字はあくまでも参考にすぎないが、24日の上昇に「熱気」は感じ取れない。

東京市場も同様だ。前場の東証1部の売買代金は1兆6386億円。日通しだと3兆3000億円ペースで前日(3兆6191億円)を下回る公算が大きい。主演はコンピューターによるアルゴリズム取引との見方が多い。

JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは「現在の日本株の水準はリーマン・ショック並みの景気悪化を織り込み、下値余地は小さいとはいえ、新型コロナのまん延に歯止めがかかったことが確認されるまでは株価が持続的な上昇局面に入る可能性は低い」とみる。

足元では個人消費の減少や企業活動の停滞が続き、24日は近畿日本ツーリストなどを傘下に抱えるKNT-CTホールディングス(9726)が20年3月期の業績見通しを下方修正した。4〜5月に発表が本格化するはずの3月期決算では、21年3月期の業績予想を「未定」とする企業が相次ぐとみられる。

需給面で買い戻し圧力がさほど強くないことも気がかりだ。東京証券取引所が24日に発表した19日申し込み時点の信用取引の売り残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は8182億円と、直近ピークの昨年9月16日(1兆1261億円)の7割ほどにすぎない。

世界を見渡せばアフリカ東部やインド、パキスタンで大量のバッタが農作物などを食い荒らす被害が深刻化し、東に向け移動中だ。「人類の次のリスクはバッタ」との警戒もある。世紀のリバウンドがあだ花となり、二番底を探るシナリオに注意したい。

〔日経QUICKニュース(NQN) 末藤加恵〕

2020/3/25 12:44
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL25HN9_V20C20A3000000/