安倍晋三首相は28日午前の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全国の小中高校などへの一斉休校要請に関し「今が感染の拡大のスピードを抑制するために、極めて重要な時期だ」と理解を求めた。子どもの休校で休暇を余儀なくされるパート労働者らの収入が減る可能性に言及し「対応も検討している」と語った。

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首相は「先手先手でやるべきだと判断した。極めて切迫した時間的制約のなか、政治が全責任を持って判断すべきだと考えた」と強調した。「何よりも国民の命と健康を守ることを最優先に、やるべき対策を躊躇(ちゅうちょ)なく決断し実行していく」と述べた。

社員の有給休暇の取得などで経営難になった中小企業への対策も検討する意向を表明した。

加藤勝信厚生労働相は記者会見で、休校で会社員が仕事を休んだ場合の支援策として雇用調整助成金の拡充などを検討する考えを明らかにした。従業員を休ませるなどして雇用を維持する企業に支給する助成金で、新型コロナウイルスで経営に影響が出る企業への特例措置を設けている。要件をさらに緩和する。

厚労相は「働いている人が休みやすい環境の整備に向けた方策についても速やかに検討して実施したい」と述べた。

厚労省は雇用調整助成金の拡充策として、中国関連の販売が1割以上を占める企業を対象とした現行の特例措置を、新型コロナで影響が出る企業全般に広げる。観光業にとどまらず製造業など幅広い企業が対象になる。

梶山弘志経済産業相は記者会見で、信用保証協会が融資額の100%を保証する資金繰り支援を全国の中小企業が受けられるようにすると表明した。旅行業など訪日客の減少で影響を受ける業種にも支援策を講じる。

萩生田光一文部科学相は記者会見で「地域や学校の実情を踏まえ、期間や形態は様々な工夫があっていい」と各地の教育委員会などに柔軟な対応を求めた。文科省は28日、各教委などに3月2日から春休みまでの一斉休校を正式に要請した。

各教委や学校からは学習の遅れや休校中の生活指導の難しさなどへの懸念が出ている。保護者が共働きだったり休めない職種だったりして、子供の居場所の確保が難しい例もある。萩生田氏は「児童生徒の学習や家庭の状況を踏まえ、適切な期間を設定するなど、学習に著しい遅れが生じないよう実施形態を工夫してほしい」とも述べた。

麻生太郎財務相は一斉休校に関し「かかる経費は政府が払う」と語った。「学校が休みになると、預ける先がないお子さんたちを抱えている共働きの家庭とかに支障が出ることははっきりしている」と説明した。

首相は27日の新型コロナウイルス感染症対策本部で全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請すると表明した。3月2日から春休みの期間での実施を求めた。実際に休校するかは学校や地方自治体の判断としている。

首相は28日の衆院予算委で4月26日投開票の衆院静岡4区補欠選挙は予定通り実施する方針を示した。政府が自粛を要請するスポーツや文化イベントには該当していないと指摘した。

2020/2/28 10:46
日本経済新聞
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