【ロンドン=佐竹実】世界最大のモバイル関連見本市「MWC」の主催者は12日、2月下旬にスペインのバルセロナで開催予定だった同イベントを中止すると発表した。新型肺炎の感染が拡大しているためで、主要な参加企業も出展中止を表明していた。展示会や見本市の中止は各地で相次いでおり、ホテルや航空機のキャンセルなどによる経済的影響は今後大きくなりそうだ。

MWCは通信関連の業界団体GSMAが主催。スマートフォンの新製品や次世代通信規格5Gの新技術などを展示する場で、今年は24〜27日の日程で開催する予定だった。だが、主要な参加企業である北欧の通信機器大手のノキアとエリクソン、ソニー、NTTドコモなどが相次いで出展を見合わせると表明し、中止を余儀なくされた。

GSMAは12日の発表で、「コロナウイルスの感染拡大に加え渡航などに関する懸念があり、開催が不可能になった」と説明した。開催する地元自治体もGSMAの決定を理解しているという。世界保健機関(WHO)は12日の記者会見で、MWCについて「適切な対応を取れば開催は可能」と述べていた。

MWCは10万人が参加するイベントだ。屋内のため、「自社のブースに数千人の来場者が見込まれる。(ウイルスの)リスクが低くても、従業員や来場者の健康と安全を保証することができない」(エリクソン)と考える参加者が多かった。中国の通信機器大手華為技術(ファーウェイ)など多くの中国企業が参加することを懸念された可能性もある。

大型イベントの中止は経済的な影響も大きい。バルセロナのホテルやレストランなどへのMWCの経済効果は大きく、英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると1万4千の臨時雇用と、4億9200万ユーロ(約590億円)を生み出すと試算されている。

新型肺炎の感染拡大を受け、展示会や見本市の中止や縮小が相次いでいる。スイスの腕時計世界最大手スウォッチグループは、2月下旬から最大都市チューリヒで開催予定だった展示会の中止を決めた。4月下旬からスイスで開く高級時計の2大見本市「ウォッチズ&ワンダーズ」と「バーゼルワールド」の主催団体も開催の是非を検討しているとみられる。

18日からイタリアで始まるファッションショーのミラノコレクションでは、約1000人の中国人バイヤーらが参加できず、苦肉の策としてオンライン中継する。シンガポールで11日から開かれている航空ショーでも参加企業が減り、会場は閑散としている。
2020/2/13 4:30 (2020/2/13 5:29更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55554830T10C20A2000000/