いよいよ始まる2020年の経済はどう動くのか。「世界経済は悪化する」と断言する人がいる。それは世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏だ。来日したジム・ロジャーズ氏に真相を直撃した。
中略
――朝鮮半島はどうでしょうか。韓国と北朝鮮の融和が実現すれば、大きなビジネスチャンスがあると語っていますね。ただ北朝鮮については、2度の米朝首脳会談以降に対話は進展していませんが、韓国と北朝鮮には引き続き期待をしていますか。

日本人にとって嫌な話かもしれませんが、韓国は日本より成功する見込みが高いでしょう。理由は新刊でも述べましたが、北朝鮮にあります。確かに、北朝鮮の経済状況は今、世界の最低位と言っていいレベルです。しかし、もともとは資源が豊富で韓国より裕福な国でした。1970年代から徐々に韓国との差が開いて、今や完全に後れを取ってしまいましたが、経済を開放すれば豊富に残っている地下資源を生かして再び豊かな国になれます。

韓国は日本と同じような問題を抱えています。出生率が低く、子供たちが公務員になりたがるといった保守性も共通しています。しかし、朝鮮半島の南北融和が実現すれば、韓国の問題は軽減され、韓国は投資するに値する国に変貌すると見ています。

北朝鮮には若い女性が多く、出産や育児に対する意識も昔からさほど変わっていません。したがって、日本をはじめ少子化に直面する近隣諸国に比べると、北朝鮮から女性が流入する韓国はかなり改善が見込まれます。不調に喘いでいる韓国経済に私が期待するのも、北朝鮮というフロンティアがあるからです。

ただし、私が言う「南北融和」とは、南北が完全に一緒になるということではなく、両国の国境である38度線が開かれることです。統一の話をするにしても、段階的に考える必要があり、まず38度線が開かれないと統一はできないということです。

38度線がオープンになることについては、周辺国の中国やロシアは賛成ですが、日本にとっては北朝鮮が脅威なので反対していますね。そして、一番の問題は米軍です。米軍は約3万人が韓国にいる状態で、それを移動させることには後ろ向きです。中国とロシアの国境に接するところに軍を配置できる地域は朝鮮半島のみです。トランプ大統領はこの問題に気づいていますが、どうしたらいいかわかっていません。

朝鮮半島の現実を述べれば、38度線の守衛からは銃が撤収されています。地雷も掘り起こしています。これは日本でもアメリカでも報じられていない事実ですが、こうした変化は実際に起きています。
――2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される日本に最も期待することは何でしょうか。

新刊で述べたとおりですが、2020年の日本は東京オリンピック・パラリンピックで盛り上がることにはなるでしょう。さまざまな経済波及効果が試算されているし、日本の景気にプラスになると考える人もいます。確かに表向きにはオリンピックのいい面もあり、道路は改装され、真新しいスタジアムができあがります。そうした事業に関わった人たちは一定の恩恵を得られるかもしれません。政治家もポジティブな成果をアピールするでしょう。

しかし歴史を振り返れば、オリンピックが国家にとってお金儲けになったためしがないことがわかります。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあっても、国全体を救うことにはならず、むしろ弊害を及ぼします。結局のところ、オリンピックのせいで日本の借金はさらに膨らみます。やがてオリンピックが2020年に開かれたことをほんの一握りの人しか思い出せなくなるでしょう。

したがって、東京オリンピック・パラリンピックが日本再浮上の直接的なきっかけになるとは思いません。日本には少子化や膨大な借金など多くの問題が残されたままだからです。事実、投資先として見たときに、私は2018年秋に保有していた日本株をすべて手放しました。今現在は株であれ日本円であれ、日本に関連する資産は何も持っていません。

ただし、東京オリンピック・パラリンピックは、大挙して日本にやって来る外国人に、日本の素晴らしさを知ってもらう絶好の機会となるでしょう。

日本は私がお気に入りの国の1つです。素晴らしい観光の地であり、それに相応しい豊かな文化と伝統を持っています。とりわけ日本の食文化は世界一だと思っています。日本を訪ねる際には私はいつでも食事を楽しみにしています。食事のほかにも歴史的な建造物や古民家、茶道や武士道の文化など、外国人を魅了するものが日本にはたくさんあります。したがって、観光こそが2020年以降の日本に私が最も期待することです。
https://president.jp/articles/-/32308