【シリコンバレー=白石武志】米航空宇宙局(NASA)は19日、米スペースXが開発中の有人型宇宙船の緊急脱出試験に成功したと発表した。上昇するロケットから宇宙船を切り離し、パラシュートで海面に降下する内容で、国際宇宙ステーション(ISS)に飛行士を送る本番前の最後の主要なテストという位置づけだった。約9年ぶりの米国による有人宇宙飛行の再開に近づいた。

スペースXの有人型宇宙船「クルードラゴン」は19日午前7時30分に米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。約90秒後に脱出装置を作動させて宇宙船をロケットから切り離し、その後、パラシュートを使って太平洋沖に着水した。試験に要した時間は約10分間だった。

米国は2011年のスペースシャトルの退役以降、ISSに飛行士を送り込むのをロシアの宇宙船に頼っている。NASAはスペースシャトルの開発に多額の国家予算を費やした反省から、後継となる宇宙船の開発についてはスペースXと米ボーイングに開発を競わせることで効率を高める方針を打ち出している。

スペースXは19年3月に無人のクルードラゴンを打ち上げてISSにドッキングし、地球に帰還する試験を終えている。一方のボーイングは19年12月の打ち上げ試験で同社の宇宙船「スターライナー」のISSへのドッキングに失敗しており、両社の進捗度合いには差が出ている。

スペースXを率いる米起業家のイーロン・マスク氏は19日の試験終了後に開いた記者会見で、宇宙飛行士を乗せた有人飛行の実施時期について「4〜6月になるだろう」との見通しを示した。同席したNASAのブライデンスタイン長官も20年の早期に米国の手で宇宙飛行士をISSに送り込む考えを示しているが、時期については明言しなかった。
2020/1/20 7:28
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54585480Q0A120C2EAF000/