「○○ペイ」が今年の「新語・流行語大賞」でトップ10に入った。スマートフォン決済を手がける各社は、買った金額の一部が還元されるキャンペーンを競って行い、釣られて使い始めた人も多かったはず。政府も消費増税への対策でキャッシュレス決済へのポイント還元制度を始め、「ペイ」への追い風となった。ただ、各社が出血覚悟で行った還元策や、税金を投入した政策による「お得」はいつまで続くのか。競争を続ける各社には息切れ感も見える。

利用者は増えたけど赤字
 ○○ペイの「お得合戦」に火を付けたのは、ソフトバンクグループの「PayPay(ペイペイ)」だ。2018年12月に始めた「ペイペイ祭」は総額100億円分、支払額の20%をポイント還元するキャンペーンで、わずか10日で終了して話題になった。

 今春からは各社が同様のキャンペーンで追随。「総額300億円」「70%還元」など数字もエスカレートした。

 消費税が8%から10%へ増税された10月からは、政府のキャッシュレス決済へのポイント還元制度がスタート。スマホ決済各社も還元率を上乗せするキャンペーンを行い、利用者数を急増させた。

 ペイペイは今年10月、サービス開始1年で登録者数が1500万人を超え、11月には2千万人超に。「LINE Pay(ペイ)」の登録者数は3600万人超。今年2月に開始したメルカリの「メルペイ」も利用者数が500万人を突破した。

 だが、大規模なキャンペーンへの多額の投資がかさみ、LINEやメルカリは今年に入ってから営業赤字が続く。

 LINEの出沢剛社長は10月に「消耗戦」からの脱皮を宣言したが、キャンペーン費用を大幅に削減したため、9月の月間利用者数はピークの6月より4割も減った。ある決済事業者は「他社がインセンティブ(還元施策)を提供しているときに何もしないとユーザーは逃げていく。事業を成り立たせるには一定の規模が必要で、バランスが難しい」と打ち明ける。

コスト負担求める銀行
 さらに、スマホ決済各社には新たな問題も持ち上がってきた。銀行からの手数料値上げの要請だ。

 スマホ決済の利用者の多くは、…
2019年12月30日07時00分
https://www.asahi.com/articles/ASMDW4285MDWULFA013.html