【サンパウロ=外山尚之】アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス次期大統領は7日までに、国際通貨基金(IMF)への債務を巡り「我々は支払いができない経済状況にある」と述べ、返済の繰り延べを求めた。10月27日の大統領選で当選後、返済猶予を求める考えを公言したのは初めてとみられる。IMFは次期政権との協議に前向きな姿勢だが、交渉がまとまらなければデフォルト(債務不履行)の可能性が高まる。

ロシア国営の対外発信テレビ局RTが7日、フェルナンデス氏と反米左派で知られるエクアドルのコレア前大統領との対談の様子を公開した。フェルナンデス氏は「アルゼンチン経済は復活する必要がある」と述べ、債務返済は経済回復後にすべきだと主張した。「我々は難しい交渉にのぞむだろう」とも語った。

IMFは2018年、アルゼンチンのマクリ大統領の求めに応じ、総額563億ドル(約6兆1500億円)にのぼる融資枠の設定で合意した。フェルナンデス氏はこの融資枠について「マクリ氏のための、人類歴史上で最も高価な選挙活動となった」と述べ、IMFがマクリ氏の再選に向けた動きを支援したと批判した。

フェルナンデス氏は1日にIMFの最大の出資国である米国のトランプ大統領と電話会談し、債務再編について協議した。9日にはフランスのマクロン大統領とも電話会談を予定している。12月10日に発足する次期政権は03年にIMFとの債務再編交渉に成功したウルグアイに倣った債務繰り延べを計画しており、IMFの主要出資国に理解を求める。

IMFのゲリー・ライス報道官は7日、「我々は彼ら(アルゼンチンの次期政権)にとって都合の良い時期に関与する準備ができている」と発言した。ゲオルギエバ専務理事はフェルナンデス氏の当選を祝福するメッセージを送っているが、債務交渉について態度を明らかにしていない。

フェルナンデス氏をはじめとしたアルゼンチンの左派陣営は2001年のデフォルトやその後の経済危機をIMFの責任だと主張しており、両者は緊張関係にある。

2019/11/8 7:25
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51937970Y9A101C1000000/