シンガポールの配車大手、グラブの共同創業者のタン・フイリン氏は29日、第21回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演し、「グラブは生活全般の問題が解決できる『スーパーアプリ』になった」と話し、配車以外も含め多くのサービスが市民生活を変え、社会に変革をもたらしたと主張した。「顧客のニーズを最優先に考えており、これからも進化を続けたい」と述べた。

グラブは2012年、アンソニー・タン最高経営責任者(CEO)とフイリン氏がマレーシアで共同設立した配車サービスが起源だ。今ではアジア8カ国、約340の都市で展開している。

フイリン氏は「ビジネスにはグローバルな優良企業とのパートナーシップが重要だ。全てを自分で考えるのは難しい」と話す。ソフトバンクグループ、トヨタ自動車などから出資を受けたことで「(取引先などの)ネットワークなどを活用できた」と話した。現在では他社と連携しながら、配車、決済、食事の宅配といった多様なサービスを手掛けるアプリにグラブは育った。「ニーズは何か、それに対するソリューションを提供できるのかを考え、最良のパートナーを探している」とフイリン氏は語る。将来のサービスとしてヘルスケア、車の共同使用などを検討しているとした。

18年には米ウーバーテクノロジーズの東南アジア事業を買収し、域内で大きくシェアを伸ばした。現在では企業の価値を示す評価額で100億ドル(約1兆900億円)を超える未上場企業「デカコーン」の1社に数えられる。

フイリン氏はグラブの成功の理由として「東南アジアのデジタルエコノミーの市場規模は2015年から3倍になっている。そこに参加できてラッキーだった」としつつ「東南アジアのローカルのニーズをわかっていたこと」が要因だと話した。

例えば東南アジアではこれまで人口の9割が現金ベースで生活し、7割もの人が銀行口座を持てていないという。そうした中でフイリン氏は「グラブは900万以上の運転手などに継続的な収入を得られる環境をつくった」と話す。
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