米グーグルが量子コンピューターを使い、複雑な計算問題を最先端のスーパーコンピューターより極めて短い時間で解く実験に成功した。今回の成果について同社の研究チームは24日(日本時間)に記者会見し「コンピューターの開発史において1903年のライト兄弟の有人初飛行に匹敵する意味を持つ」とその意義を強調した。

米カリフォルニア州サンタバーバラの同社研究所でユー・チェン量子ハードウエア開発統括らが記者会見。今回の成果の意義について「量子コンピューターで予想されていたパフォーマンスを実証したこと」と説明した。今後の目標については「量子ビットの数を今回の53から大幅に増やしていく」とし、「現実の様々な問題が解けるアルゴリズムの開発を進める」と語った。

英科学誌「ネイチャー」に発表した成果によると、同社の量子コンピューターが従来のコンピューターでは困難な問題を解く「量子超越」を達成した。理論上、量子コンピューターはスパコンを上回る性能を持つと考えられてきたが、実験で証明したのは初めてだ。

今回、グーグルは乱数をつくる計算問題を用意し、性能を検証した。最先端のスパコンが約1万年かかるのに対し、量子コンピューターは3分20秒で解けたという。米IBMからグーグルの成果について疑問の声も上がっているが、チェン氏は「量子コンピューターの性能が指数関数的に高まることを明確に示したことに意味がある」などと反論した。

量子コンピューターは人工知能(AI)の計算や金融リスクの予測、化学実験など幅広い用途が見込まれている。幅広い計算に対応できる本格的な量子コンピューターの実現にはなお時間がかかるが、研究グループは「政府や学界、産業界と広く連携して研究開発を加速したい」と述べ、今後の研究の進展に期待を示した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51331820U9A021C1I00000/