→潜在成長率の低下に伴い米経済の失速速度も低下
→経済は1つのエンジンで飛行−ソシエテのギャラハー氏

米経済は速度を落としつつあり、エコノミストの間では経済がどれほど減速してもリセッション(景気後退)を回避できるのか疑問が浮上している。

  2%未満の成長率はかつて、その後の景気縮小がほぼ確実だったが、ここにきて一部エコノミストは米経済は1−1.5%程度の成長でもぐらつくことなく進むことができると考えている。

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Sputtering? / Sub-2% GDP growth used to signal recession, RBC says stall speed now about 1%

  経済のいわゆる失速速度の低下は懸念を和らげる。ただそれでも、米金融当局は利下げ圧力にさらされており、トランプ大統領は来年の選挙に向けての課題に直面している。

  史上最長の景気拡大がそのまま持続するかどうかは結局のところ、米中貿易戦争の中での製造業の不振を消費者が相殺できるほど十分に支出を維持できるかどうかに左右されそうだ。

  ソシエテ・ジェネラルの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・ギャラハー氏は、「失速速度という概念がにわかに今、景気拡大局面の大部分よりもはるかに重要になってきた。経済は1つのエンジンで飛行しており、それは消費者だ」と指摘した。

  航空業界でいう失速速度とは、水平飛行を維持しながら飛行できる最低の速度を意味する。経済では自律的な成長でなくなる水準を指す。

□消費者の反応
  これは消費者や企業が景気不振に直面して後ずさりするときに起こる。

  RBCグローバル・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、エリック・ラッセルズ氏は先月のリポートで、「経済主体が十分に懸念するようになると、正当化されるかどうかにかかわらず、軽めの景気減速が容易に悪化しかねない」と指摘した。

  成長見通しは確かに弱まっている。製造業は年前半に既に不況に陥っており、設備投資は弱まり、雇用の伸びは鈍化した。アナリストの間では、国内総生産(GDP))伸び率が来年1.7%に減速すると見込まれている。

  ラッセルズ氏によると、1940年代にまでさかのぼると、実質GDP伸び率が2%を下回った後にはほぼ確実にリセッションが続いた。同氏や他のエコノミストは現在、米経済がそのペースでは腰折れを回避できると予想しており、失速速度の低下は、成長がさらに減速し月次賃金上昇率が鈍化しても米経済は拡大を維持できるという意味だ。

  失速速度の低下は経済の潜在成長率の減速が主な理由だ。バークレイズの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏は「ここで問題なのは、潜在成長率が鈍化しているなら、現在の急速な景気拡大の構成要素は40年前にそうだったものとは非常に異なるということだ」と指摘した。

Less Potential
Estimates of potential economic growth have eased over time
(アメリカの潜在成長率グラフは引用できない形式のため、元ソースでご覧下さい)

  大方のエコノミストは、米経済が来年、失速速度を上回って推移できると予測しているが、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のヨアヒム・フェルズ氏とアンドルー・ボールズ氏は先週のリポートで、2020年前半に成長率が1%前後に減速すると予想。「リセッションはわれわれの基本シナリオではないが、失速速度で動いている経済を転倒させるのにあまり多くを必要としない」と記した。

原題:
U.S. Economy’s Slowdown Spurs Concern It’s Nearing Stall Speed(抜粋)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-10-01/u-s-economy-s-slowdown-spurs-concern-it-s-nearing-stall-speed

2019年10月2日 12:47 JST
Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYPXZGDWRGG401