【シリコンバレー=白石武志】米アップルは29日、スマートフォン「iPhone」などの修理を手掛ける認定事業者の対象を拡大すると発表した。従来は家電量販店などに限定していたが、今後は中小事業者でも試験に合格すれば認め、純正部品を供給する。修理で買い替えサイクルが延びると端末販売にはマイナスだが、動画配信などサービス事業で稼ぐには顧客満足度を高めるのが重要だと判断したようだ。

「独立系の修理事業者プログラム」と呼ぶ新たな認定制度をまず米国で始める。段階的に他の地域にも広げる。認定は無料。商業地域に店舗を持つなど一定の条件を満たした上で、技術力を確かめるオンライン上の試験を製品ごとに毎年受ける必要がある。合格した事業者には、ディスプレーや電池などの純正交換部品のほか修理マニュアルや工具などを提供する。事業規模の大小で提供条件は変えない。

アップルの認定を受けた修理事業者の拠点数は現在、世界で5000を超え、米国内では約1800に上るという。6月には米国内に約1000店ある家電大手ベストバイの全店舗で純正部品を使った修理サービスを始めると発表した。

2007年の初代iPhoneの発売から12年が経過し、スマホの機能は成熟しつつある。米調査会社ストラテジー・アナリティクスによると米消費者のスマホの買い替えサイクルは3年近くに延びた。米IDCによると世界のスマホ出荷台数は7四半期連続で前年実績を割り込んだ。

アップルは世界で14億台以上普及している自社製端末に動画やゲームを配信するなど、各種サービスに成長の活路を求めるようになっている。認定修理店を増やして自社製品の継続利用を重視する取り組みは、ハードウエア販売に依存する収益構造からの脱却を進める戦略を象徴する動きと言えそうだ。
2019/8/30 8:59
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49191720Q9A830C1000000/