【ニューヨーク=西邨紘子】米オクラホマ州地裁は26日、米国で社会問題となっている麻薬入り鎮痛剤「オピオイド」中毒のまん延を巡り、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)に5億7200万ドル(約606億円)の制裁金を支払うよう命じた。米国では製薬会社を相手取った類似の訴訟が2千件以上起こされている。メーカーの責任が一部認められたことで、各社の経営に打撃となりそうだ。

判決では、鎮痛薬の販売手法が適切だったとするJ&J側の主張を退け、オピオイド中毒問題におけるメーカー側の責任を認める内容となった。ただ、制裁金の額は検察が要求していた170億ドルより大幅に減額された。J&Jは同日、声明で「事実にも法律にも基づかない、間違った判決だ」とのコメントを出し、上訴する方針を表明した。

米国では、自治体が鎮痛剤メーカー各社を相手取った類似の訴訟が2千件以上起こされている。オクラホマ州の訴訟は、オピオイド中毒問題で製薬会社の責任を問う最初の審理として、判決に注目が集まっていた。

オクラホマ州の検察は当初、J&Jとともにオピオイド系鎮痛薬メーカーの米パーデュー・ファーマ、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの計3社を訴えた。だが、パーデューは3月に2億7000万ドル(約300億円)の和解金支払いで合意。開廷に先立ち、テバも8500万ドルの支払いで和解した。

オピオイド系鎮痛剤は従来薬に比べ依存症の危険が少ないとのうたい文句で1990年代に売り出され、使用が急速に拡大した。だが、その後同薬の乱用による中毒患者が急増。危険性の周知を怠ったなどとして、製薬各社の責任を問う声が高まった。米疾病対策センター(CDC)によると、1999〜2017年に米国で40万人が中毒により死亡した。

2019/8/27 6:26
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49033640X20C19A8000000/