ホテルチェーン大手のアパグループ(東京都港区)が、目標とする来年3月末の「国内客室10万室」達成に向けて猛スパートをかけている。今月6日時点で、提携ホテルと建築・設計中の物件を含め529店、客室数は8万7031室。ただ元谷一志(もとや・いっし)社長は産経新聞の取材に、来年3月時点では「9万室強になるかもしれない」と述べ、目標が未達になる可能性に初めて言及した。同社は「最後まで諦めない」として、提携ホテルをさらに増やそうと懸命だ。

□怒濤の開業ラッシュ

 アパグループは2015(平成27)年4月から20年3月まで5カ年の中期経営計画で「日本で断トツNo.1のホテルチェーン」を掲げ、客室10万室、ホテル部門の売上高1200億円、カード会員1500万人などの目標を設定した。当時の客室数は計画中を含め約5万2000室。5年間で倍増する野心的な計画だ。

 これまで元谷社長は取材に対し、「順調に来ている」(昨年8月)などと明るい見通しを示していた。

 それを証明するように、アパグループでは怒濤(どとう)の大型タワーホテル開業ラッシュが続く。9月に同社最大規模の「アパホテル&リゾート横浜ベイタワー」(横浜市中区、2311室)、10月に「アパホテル山手大塚駅タワー」(東京都豊島区、613室)、12月には「アパホテル&リゾート御堂筋本町駅タワー」(大阪市中央区、913室)が開業予定だ。

 年が明けても、春に「アパホテル&リゾート両国駅タワー」(東京都墨田区、1111室)が開業し、引き続き1000室超の大型物件が複数控えている。カード会員の累積会員数は昨年、中期計画の目標1500万人を早々と突破した。

□目標達成へ提携強化

 それでも中期計画の10万室達成が難しくなったのは、ホテル用地の取得が思うように進まなかったからだという。同社によると、駅に近い一等地ではホテルやマンションの事業者間で取得競争が激化しているうえ、値上がりを見越した土地の売り渋りもあり、用地確保が難しくなっている。

 ただ元谷社長は、父でグループ代表の元谷外志雄(もとや・としお)氏が「最後まで諦めないと言っている」とし、来春10万室の目標は変えない方針だ。

 アパグループは、全国の独立系ホテルと提携する「アパパートナーホテルズ」制度を平成23年2月に導入。直営ホテルが進出していない地域で拠点を増やしており、その拡大を急ぐ。パートナーホテルになれば、アパホテル公式サイトの予約システムや会員向けポイントプログラムを共有でき、新規顧客獲得やリピーター確保の面でメリットが大きい。

□規模のメリット追求

 さらに、フランチャイズ(FC)展開にも注力する。26年にFC契約を結んだ貸会議室大手のティーケーピー(TKP)は、札幌、東京、大阪など7軒を運営中で、来年3月までにさらに3軒をオープンさせる計画だ。

 アパグループは今年に入り、FCの実績や利点をアピールする説明会を毎月のように各地で開き、加盟ホテルの獲得を急いでいる。

 規模拡大を目指すのは、会員の利便性に直結し、リピーターを中心に安定した顧客基盤を獲得できるからだ。来春の10万室には黄信号がともったが、「断トツNo.1」とする目標の達成は現実味を増している。今後はホテル数や客室数の拡大とともに、さらなるサービス向上や料金面でのメリット拡大にも期待がかかる。

2019.8.13 11:00
産経ニュース
https://www.sankei.com/west/news/190813/wst1908130004-n1.html