「富士山登山鉄道構想検討会」(会長・御手洗冨士夫経団連名誉会長)が29日、第1回理事会を東京都内で開き、鉄道の事業主体やルートを盛り込んだ基本構想案を、2020年12月までにまとめることで一致した。

検討会は1月の山梨県知事選で同鉄道を公約した長崎幸太郎知事が設置。登山鉄道はこれまでも模索されてきたが実現せず、行方が注目される。

理事会で理事長に選ばれた山東昭子参院議員は「日本の宝である富士山に登山鉄道を敷こうというのは、わくわくするような気持ちだ。課題は多々あるが、慎重にスピーディーに進めていきたい」と話した。

理事会では、安全性や採算性を憂慮する意見も出た。小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長は「鉄道会社がもうけるだけで、世界遺産の価値が食いつぶされるのは最悪のシナリオ。運賃が環境保全に寄与する『流れ』を検討すべきだ」と指摘した。

地元観光業界は鉄道建設に関し「冬も麓から5合目まで行けるため観光客が通年で来る」と期待。夏の混雑ピーク解消につながるとし、車の排ガス減も利点とする。

一方、巨額の費用負担や、工事による環境破壊、噴火災害への脆弱性などの懸念があり、賛否が割れてきた。県内には「知事選の目玉にしただけ」(野党筋)との声もある。

長崎知事は理事会終了後、報道陣に「一番重要なのは安全性だが、世界遺産の保全に向け、(鉄道構想を)価値のあるプロジェクトにしていきたい」と述べた。

登山鉄道を巡っては、50年以上前、5合目と山頂を結ぶ地下ケーブルカー計画が浮上し「ハイヒールで日帰り登山できる」と話題になった。近年は地元自治体などが鉄道敷設を提言。電気バス案も出たりしたが、いずれも実現しなかった。〔共同〕

2019/7/29 11:34 (2019/7/29 12:27更新)
日本経済新聞
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