【ワシントン=白石武志】米ウーバーテクノロジーズは12日、トヨタ自動車などと共同開発中のライドシェア向けの自動運転技術を日本市場にも供給する検討を進めていると明らかにした。ウーバーが日本でライドシェアサービスを始められない場合には、別の会社に技術や車両を供給するなどのかたちで日本での普及を目指す考えも示した。

ウーバーの自動運転技術の開発部門「アドバンスト・テクノロジー・グループ(ATG)」の責任者であるエリック・メイホーファー氏が日本経済新聞などの取材に答えた。同氏は提携関係にあるトヨタ自動車やデンソー、ソフトバンクグループが「日本の(移動サービス)市場に非常に力を入れている」と指摘。トヨタなどとともに「ATGが開発中の自動運転技術を日本市場に展開する最も良い方法を検討している」と述べた。

ウーバーは2018年8月にトヨタ自動車から5億ドル(約540億円)の出資を受けるとともに、ライドシェア向けの完全自動運転車を共同開発して21年にウーバーのサービスに投入する計画を発表した。今年4月にはウーバーからATGを分社化してトヨタ、デンソー、ソフトバンクグループの投資ファンドから計10億ドルの出資を受けることも発表している。

ライドシェアは日本では「白タク」行為として原則禁止されている。ウーバーは今も日本ではライドシェア事業は手掛けられておらず、タクシー会社と連携した配車サービスなどに限定している。メイホーファー氏は今後もウーバーが自動運転車を使ったライドシェアサービスを日本で展開できない場合に備えて「代替案を議論している」と説明した。旅客運送の許可を受けているタクシー会社などに技術や車両を提供することなどを検討するとみられる。

ウーバーでは18年3月に米アリゾナ州で公道走行試験中に起きた死亡事故の影響で自動運転技術の開発が一時停滞した。ライバルである米ウェイモや米GMクルーズなどとの開発競争に出遅れているのではないかという質問に対し、メイホーファー氏は「我々が開発しているのは単なる自動運転車ではなく、自動運転車を使った大規模なライドシェアサービスだ」と述べ、豊富な旅客輸送などのデータが強みになると強調した。
2019/6/13 6:15
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46031530T10C19A6000000/