米AMDと韓国サムスン電子は、複数年にわたる戦略的パートナーシップを締結すると発表しました。その一環として、AMDのグラフィックス技術を活用したスマートフォン向けチップセットをサムスンが開発します。

AMDはPC向けGPUで世界シェアトップ2社の一角で、ゲーム専用機やクラウドプラットフォーム向けの製品も展開しています。一方、モバイル向けの製品では2009年にクアルコムにImageonプロセッサ事業を売却して以来、同社の製品ラインナップでは空白となっています。AMDにとっては、サムスンとの提携により、モバイル領域での空白を補完することになります。

技術供与の対価として、サムスンはAMDに対し技術ライセンス使用料を支払います。Bloombergによると、この対価は数億ドル相当となる見込みです。

5月末に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2019」にて、AMDは次世代GPUマイクロアーキテクチャ「RDNA(Radeon DNA)」を発表しています。今回の提携によりAMDはこのRDNAアーキテクチャのIP(知的財産)をサムスンに提供します。

AMDが同アーキテクチャを活用して設計するPC向けGPU「Radeon RX 5000」は、ゲーム向けグラフィックスに最適化された製品で、6月に米国で開催されるゲーム展示会E3にて詳細が公表されます。

RDNAアーキテクチャの詳細は明らかにされていませんが、従来比で1クロックあたり25%、消費電力1Wあたり50%の高速化を図ったとしています。AMDいわく「超低消費電力でハイパフォーマンス」が特徴がRDNAアーキテクチャですが、そもそも15W〜65W電源で動作するPC向けに設計されている技術。モバイル向けに展開するには、消費電力を5W以下に抑えつつも、高いパフォーマンスを維持する必要があります。

サムスンはモバイル向けチップセット(SoC)として「Exynos」を設計・開発しています。このチップセットの将来製品に搭載されるGPUがRDNAアーキテクチャをベースとしたものになると見られます。

ちなみに、Exynosシリーズの競合製品となるクアルコムのSnapdragonシリーズには「Adreno」というGPUが組み込まれています。このAdrenoはAMDが売却したImagenプロセッサを発展させたもので、Adrenoの名称はAMDの「Radeon」のアナグラムとなっています。

AMDにとっては、サムスンへのライセンス供与でモバイルチップセット市場に10年ぶりに再参入する格好となり、かつての売却した事業と競合することになります。
https://japanese.engadget.com/2019/06/04/amd-radeon-gpu/