【上海=張勇祥】人民元がドルに対し急落している。中国人民銀行(中央銀行)は14日、取引の「基準値」を1月以来4カ月ぶりの安値となる1ドル=6.8365元に設定した。市場では「トランプ米政権による制裁関税第4弾の表明を受け、輸出下支えを目的に元安を容認している」(大手銀行)との見方がある。

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人民元の紙幣

基準値は3月に付けた直近の高値(1ドル=6.6850元)から累計で2.2%下落した。人民銀は市場実勢をもとに基準値を公表するが、相場の水準や方向性について意向を反映することが少なくない。中国銀行の王有鑫研究員は「対米摩擦の影響を和らげるのに元安は有効」と話すなど、一段の元安を見込む声が多くなっている。

今後は1ドル=7元の大台に接近するかが焦点になる。人民元の対ドル相場は2018年春に1ドル=6.2元台の高値を付けた後、米中摩擦の激化を背景に18年秋には7元に迫る場面があった。トランプ米政権はかねて元安が貿易赤字の原因だと批判してきただけに、元安容認は中国の強硬姿勢を反映するシグナルにもなる。

14日の中国株は続落して取引が始まった。上海総合指数は2872と前日終値から1%ほど下げて寄り付いた。米国や日本の株式市場の下落を受け、持ち高を減らす動きが先行した。

2019/5/14 10:39
日本経済新聞
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