サイバーエージェントは、2013年にプライベートクラウドの内部アドレスとしてIPv6を採用するなど、IPv6へのチャレンジをしてきました。過去のIPv6への取り組みは技術チャレンジや社内での利便性向上のために実施してきましたが、今回の「AbemaTV」における動画配信のIPv6対応はユーザーからの要望がきっかけとなっています。

 2017年12月に行われた株主総会の質疑応答において、AbemaTVユーザーでもある株主様から「私はインターネットを見るのに20時以降、データが重くなってしまう。AbemaTVもIPv6に対応してほしい」というご要望をいただき、社内での検討を開始しました。

 国内のインターネットトラフィックは年々増加を続けています。総務省の「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果」という統計資料からも読み取れるように、国内のブロードバンド契約者の総トラフィックや、1契約あたりのダウンロードトラフィックは増加の一途を辿っています。2018年11月分の資料では、国内におけるブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラフィックの推定は約11Tbpsとなっていて、前年同月と比べ23.3%の増加となっています。さらにネットワーク機器ベンダーのCisco Systemsによる将来予測では、2017年から2022年の間にインターネットトラフィックは3倍になるとされています。

 このようなトラフィック増の中、さらなる課題として、日本国内で多くの方がインターネットへの接続に利用しているNGNの「PPPoE」方式には、夜間に混雑しやすく、増強も難しいとされる箇所があります。ただし、サービスがIPv6に対応していて、ユーザー側も「IPv6 IPoE」という通信形態が利用できる場合は、その混雑部分を回避することが可能とされています[*1]。

 AbemaTVのビジョンは「ネット発のマスメディアを創る」です。マスメディアは多くのユーザーに番組を届ける必要があります。2017年秋にAbemaTVで配信された「72時間ホンネテレビ」は、Tbps単位の配信トラフィックを記録しました。その後も、AbemaTVではTbpsを超える配信をしてきました。我々はさらに多くのユーザーに番組を届けたいと考えています。IPv6対応によって混雑していない経路を利用してもらうことができれば、混雑しやすい夜間のプライムタイムでも、多くの方にAbemaTVを楽しんでいただけると考えました。

 また、ネットワークが混雑している環境では、再生が始まるまでに時間がかかったり、再生途中でリバッファリングが起こったり、ABR(Adaptive Bit Rate)で低い画質が選択されたりするなど視聴品質の低下を引き起こす可能性もあります。

 AbemaTVでは快適な視聴体験を大切にしているため、これらの課題に対してIPv6への対応が1つの緩和策になると考えました。
以下ソース
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1178159.html